2025.05.07ベルリンのペルガモン博物館のリニューアルに向けたプロジェクト「The Dragon Carpet Travels the World」に参加
ベルリンのペルガモン博物館のリニューアルに向けたプロジェクト「The Dragon Carpet Travels the World(ドラゴンカーペットが世界を巡る)」に、桑沢デザイン研究所も参加しています。
この企画では、博物館が再制作した17世紀コーカサス地方の絨毯「ドラゴンカーペット」を100のパーツに分け、世界中のクリエイターや団体がリレー形式で引き継いでいきます。
それぞれが自らの文脈で次の参加者を紹介しながら、カーペットとともに物語が世界を旅していくというものです。
本校では、教員と学生(卒業生)がチームを組み、桜の時期の渋谷を舞台に、変貌を続ける都市の表情をVR動画で表現しました。
VR動画は、ベルリン・ペルガモン博物館内のイスラム美術館のWebサイトにて、360°でご覧いただけます。ぜひチェックしてみてください。
The Dragon Carpet: Weaving the Spirit of Shibuya at the Scramble Crossing
Filmed in Shibuya, Tokyo, Japan | March–April 2025
桑沢デザイン研究所 (鈴木一成, 川畑明日佳, 杉澤希望, 豊島晶, 桑沢卒業生)
東京・渋谷のスクランブル交差点は、世界で最も有名な歩行者交差点のひとつです。その混沌としながらも驚くほどに秩序を保つ交差点は、多くの人々を魅了してきました。ピーク時には最大3,000人もの人々が四方八方から一斉に横断しますが、不思議なことに行き交う人々はほとんど衝突することもありません。
東京は常に進化し続ける都市ですが、現在、渋谷は100年に一度の大規模な再開発の真っ只中にあります。その一環として、渋谷スクランブル交差点自体も変貌を遂げつつあります。2027年までに、この一帯はアクセス性を向上させるために再設計される予定であり、ちょうどペルガモン博物館の再オープンとも重なります。この再開発の一環として、渋谷駅前の「ハチ公ファミリー」陶製壁画は、35年間交差点の近くに設置されていましたが、2025年1月に永久撤去されました。東京生まれで渋谷駅とその周辺に親しんできた私たちにとって、このエリアは過去10年間でゆっくりと、しかし完全に変貌を遂げました。かつて子供の頃に見慣れていた渋谷は、ほぼ姿を消してしまったのです。
Fragment #34 では、2025年の渋谷スクランブル交差点のありのままの姿、そしてその躍動感を捉えています。この都市が絶えず変化し続ける中で、一瞬の儚い景色を切り取る試みです。2027年に博物館が再オープンする頃には、この象徴的な風景も現在の姿では存在しないでしょう。良くも悪くも、変化こそがこの落ち着きのない大都市を形作る本質なのです。
私たちが教えるデザイン専門学校「桑沢デザイン研究所」のすぐ隣には、18世紀に創建された歴史ある北谷稲荷神社が佇んでいます。渋谷らしさを反映し、現在の神社はコンクリートと金属を用いたモダンな構造となっていますが、1772年から龍神が祀られています。諸説ありますが、コーカサス地方はシルクロードの重要な拠点であり、龍のモチーフがこの交易路を通じて日本へと伝わり、最終的に日本のデザインにも影響を与えた可能性があると考えられています。歴史と現代がシームレスに交錯する東京は、絶え間ない変化の中で未来を紡ぎ続けています。それは、17世紀のコーカサス地方で紡がれたドラゴン絨毯が変わらず何世紀にもわたって保存・展示されている光景と対比をなすかのように。