日本で最初の『デザイン』学校で未来を創造する【専門学校桑沢デザイン研究所】

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【月刊インタビュー】 桑沢卒の素敵なあのひと
今注目のクリエイターにお話を伺う連載。第11回目は、イラストレーターとして活躍しているあのひとです!


イラストレーター カワタアキナさん

大学を経て、桑沢デザイン研究所 夜間部 デザイン専攻科 ビジュアルデザインコース卒業。鈴木成一装画塾 修了。 人物画を得意とし、辻仁成著『真夜中の子供』など、書籍の装画制作を中心に活動を行う。第六回東京装画賞にて金賞。

―― ご担当された今年の桑沢イメージポスターについて教えてください。

お声がけいただいた時は、光栄でもあり、驚きました。入学前から桑沢は「特別感のある学校」だと思っていて、己の道を突き進んでいる上にとても優秀な先輩たちを輩出されているので、尊敬の念があります。今回は卒業生として学校の顔になるようなポスターを担当させていただき、とても嬉しいです。

当初はキャンパスライフや桑沢らしさを分かりやすく描こうとしましたが、他の学校も同じアプローチをするかもしれないし、思い描くキャンパスライフを決めつけるのは良くないかなと考え、最終的には人物画をメインにしている自身のイラストを活かした絵作りにしました。

シンプルに人物たちの表情と手の形にフォーカスしたイラストになっています。眼差しと手を印象付けたかったので、色はできるだけ絞りました。桑沢が軸を置いている「デザインに対する本質的な考え方」や、「手を使いながら考える」部分を感じとっていただけるよう意図しています。

▼イメージポスター

イメージポスター2021 ―― クリスマスのDMについてもお話を伺わせてください。

「クリスマス」と「桑沢」を思い浮かべた時に、都会的できらびやかな印象を受けたんですね。ただ去年から今年にかけての社会情勢は、あまり華やかでキラキラした中を歩いて行くような雰囲気は合わない気がしました。桑沢を受験する方も、そんな社会情勢下で準備をして苦労されているのではないでしょうか。そこで浮かんできたイメージが、静かな雪原の中に佇む子供です。静かだからこそ輝いているものが際立つような絵作りにしているので、何か感じ取ってもらえると嬉しいです。

              ▼クリスマスのDM

―― それでは、桑沢に入るまでの経歴を教えてください。

小さい頃から絵を描いたり本を読んだりするのが好きでした。美大を目指す選択肢もあったと思いますが、美術部で絵を描いていたわけでもなく、仕事に結びつくのか不安だったのもあり、一般大に入って、もう一つの興味分野でもあった文学を学ぶことにしました。国語の教職免許を取得するために教育実習に行ったのですが、終わってみたら「教職やるのは無理だな」と(笑)。子供たちに対する責任をとても重く感じてしまったんですね。しかも指導してくださった先生が、普段から先生らしく真っ当に振舞わなければいけないと考えている方だったので、もともと教師になることを熱望していたわけではなかった私には難しいかなと感じました。仕事というのは何を選んでも苦しみがあると気づいた時に、どうせ苦しむなら、強い意志なく決めた仕事よりも、意志を持って選んだ仕事で苦しみたいと考え、何かを作る仕事に就こうと決めました。

大学時代も絵を描くことから離れきれていなかったので、漠然とイラストレーターになれたらいいなという思いはあったのですが、そうはいっても、まずはイラストをどう考えていいかわからなかったんですよね。調べていくうちに「イラストはデザインだ」という考えを見つけて、「確かにそうだ。自分が描きたいように描くのではなく、目的のために描くのがイラストなんだ」とすごく腑に落ちました。目的があって、届けたい人がいて、伝えたいことがあって、さらに自分の個性を踏まえた上で成り立つのがイラストだと気づいたんです。それからはデザインを学ぶため、大学と受験予備校をダブルスクールしました。家族に応援してもらえたので、就職を急いではいなかったですね。

受験校を探すうちに桑沢を知りました。実績も豊富で考え方も浮ついていないし、まだ何も分からない私でも、本質的な何かを言っているように感じられました。最終的には夜間部を受けたのですが、実は落ちまして。でも一年間何もしないわけにはいかないので、夜間附帯教育の基礎造形専攻にギリギリ滑り込んで、その翌年に改めて夜間部に入学しました。なので、桑沢で合計3年間は学んでいます。

―― 基礎造形専攻はいかがでしたか?

フィジカルな授業が多いのがとても印象的でした。切ったり貼ったり、外に出て見つけた素材を使って作品を作ったり。とにかく体を使って考えていくような、感覚器官を使って何かを作り出すアプローチが多かったですね。頭の中でこねくり回しているだけでは出てこない表現の幅を学べました。クラスメイトも幅広い年齢層や背景の方がいたので、そこでの会話や、一緒に作っていく中で得られる視点も、とても面白かったです。基礎造形専攻にイラストの授業はありませんが、まずはデザインやその考え方を学びたかったので、不満に感じませんでした。絵を描く方法を教えて欲しかったのではなく、どう考えてどう表現するのかなどの根っこの部分を学びたい気持ちが強かったからです。

―― 夜間部のビジュアルデザイン専攻はいかがでしたか?

基礎造形専攻を経て、さらにビジュアルデザインを学びたくなったので、夜間部に進みました。やはりイラストの授業が面白かったです。もりいくすお先生の授業をよく覚えていて、その授業も絵の描き方ではなく、どうやって自分なりに表現するのかを教えてくださる授業でした。クラスメイトの発想に対して、プロである先生からどういうアドバイスをするのかを見て、勉強になりました。後はポスターを作る授業もすごく楽しかったですね。ワンビジュアルで何かを伝えるグラフィックデザインの醍醐味というか、説明せずに何を感じさせるのか、自分の中でどうやってロジックを組み立てて実現するのかを考えるのも面白くて、勉強になりました。

―― 就職活動はいかがでしたか?

桑沢に通っている間、Webデザインのアルバイトをしていました。デジタル上のデザインやコーディングを現場で教えていただいて、とても面白かったです。いざ就職先を探し始めた時に、印刷上のグラフィックデザインと、デジタル上のデザインが選択肢としてありました。歴々の先輩方が主戦場にしていったグラフィックデザインを輝かしいものとして認識はしていたのですが、活発になってきたデジタル上でのデザインも先の広がりがすごそうだなと。その時も真っ先にイラストレーターを目指さなかったのは、性格的に何かに特化するのを不安に感じてしまうからです。1つのことだけではなく、広い範囲を見える状態でありたかったので、結局Web制作会社に就職しました。今もその会社に在籍しています。

―― 就職してからはどのようなお仕事をされていますか?

Web制作会社なので、Webデザインやコーディングをずっとやっていました。最近になって会社の方向性がブランドマーケティングに変わってきたので、印刷物やサービスのロゴのデザインなど、領域が広がってきています。私は主にデザイナーとして、ポスターやWebデザイン、コンセプト設計、アートディレクションも担当しています。手を動かして作る以前の、ブランディングやプロモーションの企画を考える役割に参加させてもらっているので、やっていて面白いですし、イラストレーターとして受注する立場ではなかなか踏み入れられない魅力があります。イラストレーターとしての自分と、デザイナーとしての自分が相互に生かしあっているのも実感するので、引き続き、両立したいです。会社はフレックスタイム制を取り入れたり、副業もOKなので、イラストの仕事も両立できています。

―― イラストレーターとしてのお仕事について伺わせてください。

徐々に会社での仕事も覚えてきた頃、イラストを仕事にするために鈴木成一さんの装画塾に通い始めました。実際に出版される本のゲラを元に装画を描く課題に取り組んで、採用されるとそのまま出版される仕組みです。鈴木さんにアドバイスしていただきながら、装画の表現をどう考えるのかを学びました。私が描いたイラストで初めて採用していただいたのが、辻仁成さんの『真夜中の子供』です。そこから何か起こると思いきや、しばらく何も起こらなくて(笑)。『真夜中の子供』が装画のまとめサイトで掲載されたのを機に、編集者の方からご依頼を頂いたりして、徐々にお仕事が増えました。その後自身のWebサイトも作って作品を掲載し始めたので、そちらから知っていただく機会も増えています。

会社では説明用のイラストを描く機会も多いのですが、装画は説明するイラストではなく、何かを予感させるような絵作りが大切だと考えています。本屋さんでたくさん本が並んでいる中で、目に留まるようにするには、読者の個人的な経験と紐づく何かを想起させるような余白があることが大切と思っているので、今はそういう部分に気を付けて描いています。

―― 第六回東京装画賞で金賞を受賞されていますね。

実は何年か続けて応募していました。いくつかある選考の通過者を発表してくれるのがありがたくて、自分の力が今どれくらいなのかが客観的に分かるのが勉強になります。初めて応募した時は第一次選考通過だったので、順位が高い方とどこが違うのかを考えながら、翌年にまた応募したりしていました。何回か応募して、2019年に『夜のピクニック』でついに金賞を頂きました。その頃は鈴木さんの装画塾にも参加していて、コンペで力試しをしてみようと実践したので、評価も頂けたのが自信に繋がりました。自分のイラストのタッチがちょっとずつ見えてきたような作品ですね。

イラストのタッチは色々試していましたが、ある程度異なるタッチで描けてしまうので、どれが一番好きなのか、何ならしっくりくるのかも見えていなかったんですね。鈴木さんの装画塾で課題に取り組むうちに、「この方向性いいんじゃない?」とアドバイスを頂いて、自分ではまだよくわかってないけど、褒めてもらえたことを素直に受け入れてみることにしました。試行錯誤するうちに、徐々に今のテイストが自分としても描きやすいし、見ていただく方も何か感じてくれるんだなと分かってきました。

―― 去年は個展もされたんですよね。

知っていただく機会を持ちたかったのと、作品を増やしたい気持ちがあって、作り始めました。個展を振り返ると、すごく難しかったですね。お題となる本を設定して人物を描き始めたのですが、本の表紙を作るのと取り組み方が異なり、世界観を捉えつつ自分のイラストが交わる部分をどう表現するのかがとても難しかったです。全くのオリジナルで描いてみようとも思ったのですが、まだちょっとできなかったんです。昔のように自由に絵が描けなくなってしまって、まだ自分自身のテーマが無いなと気づかされました。やっぱり何か物語を元に描きたくなっちゃうんですよね(笑)。それで今回は、装画を学んできた自分の自己紹介の意味も含めて、自分が興味を持った本や物語をテーマにアプローチしてみました。勉強にはなった回でしたが、次個展をするのであれば、改めて自分自身のテーマを深掘りして描いてみたいです。

―― 最後に、受験生や桑沢生に伝えたいことがあれば教えてください。

一つのことを突き詰めるタイプの人と、色々なことに手を出してみるタイプの人がいると思います。私は突き詰めるタイプに憧れるのですが、実際は色々なルートがあって、紆余曲折して別のルートを通ったからこそ学べる視点があると感じています。私自身は大学を出てから桑沢に来て、イラストも就職してから始めたので、そういうルートもあるよと伝えたいです。後は、学生時代は制作に没頭できる貴重な時間がたくさんあるので、時間をフル活用してとにかく作品を作りまくるのをお勧めします。


インタビュアー:はやしわかな
桑沢デザイン研究所 総合デザイン科 プロダクトデザイン専攻卒業。
<2021年11月>
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