ホーム 就職・キャリア 卒業生インタビュー イラストレーター/大崎メグミさん
月刊インタビュー 月刊インタビュー


イラストレーター 大崎メグミさん

本記事は、高校生向け新聞である「進路新聞」を発行している大学新聞社が本校卒業生の大崎メグミ氏をインタビューした内容を掲載しています。

さまざまな出版物やウェブサイトなど、数多くのメディアで情報を分かりやすくするために「イラスト」が果たす役割には非常に大きなものがあります。イラストレーターは、文章と共にイメージや理解を助けるために魅力あふれる作品を生み出す仕事です。現在、フリーランスのイラストレーターとして多方面で活躍する大崎メグミさんに、お仕事内容や心構えなどについてうかがいました。

難しい内容をイラストに落とし込みひと目でわかるように伝える

―― お仕事内容について、高校生にも分かりやすくお聞かせください。

私の仕事は、イラストを描くことです。おそらくは、イメージが似ているであろうほかの仕事との違いを聞かれることがしばしばありますが、アーティストの場合は「こういうものを作りたい」と自分で思ったものを生み出して社会に発表したり、誰かに買ってもらったりします。
一方、イラストレーターの場合は「こういうイラストを描いて欲しい」という依頼をいただいて、それに合わせて制作していきます。作品そのものを買ってもらうというよりは、デザインや誌面の中で求められることが多い仕事だと思います。

―― イラストレーターを目指したきっかけを教えてください。

卒業制作で電車内でのスケッチを展示したところ、それを見てくれた方々の反応が考えていた以上に良くて、イラストレーターになろうと思いました。展示した作品について「着眼点がおもしろい」「細かいツッコミが良い」と評価していただけました。そこで初めて、こういう作品をおもしろいと思ってもらえるんだ、と知りましたし、これをライフワークに、そして仕事にしたいと思うようになりました。

―― 電車内スケッチが大評判です。

専門学校に進学した際、当時の所長から「一日5枚スケッチを描きなさい」というアドバイスがありました。自宅で描こうとしたのですが、時間を確保することが難しかったんです。そこで、通学時間を活用して電車内でスケッチができないかと考えました。
スケッチするために対象をよく見て描き写してみると、細部が見えてくるようになります。描く前は気づいていなかったけど、実は靴を片方脱いでいる人だったとか。人間って見ているだけだと結構ぼんやりしてしまうんですね。描いていく中で、観察することやスケッチが必要な理由が分かったような気がしました。



―― お仕事をする中で心がけていることをあげてください。

クライアントと一緒に「より内容が伝わるイラストとは何か?」を考えるように心がけています。「こういう風にしてください」という依頼をいただいたら、「もしかしたらこうしたほうがもっと分かりやすくなるんじゃないかな」というプラスアルファの提案をするようにしています。雑誌や書物、また文章の理解を助けることができるイラストってどんなものだろうかと考えながら、意味を咀嚼してひと目で分かるものを描くように意識しています。

―― お仕事をする上でやりがいを感じたエピソードをご披露ください。

任せていただける幅が大きい仕事は、とてもやりがいを感じます。以前、八王子オーパという商業施設のビジュアルを描く依頼をいただいたことがありますが、「4周年」「バースデーケーキを描く」という指定がある以外は自由に描くことができました。八王子市出身のイラストレーターとして声をかけていただけたことも、信頼して自由に描かせていただけたことも嬉しく思いますし、そうして頑張った仕事がきっかけで別の仕事につながった時は、自分の描いたものがさまざまな人に「届いている」と実感できます。

―― 反対に大変だったり、難しいと感じたりしたことはありますか?

自分のタッチと違う感じのイラストのオーダーをもらうことがあり、クライアントとイメージのすり合わせが難しいと感じることがあります。依頼主から「このようなタッチで」とイメージを渡された時に、「タッチ」が何を指しているのかは状況によって異なります。水彩画のような表現なのか、デフォルメが求められているのか。お互いにイメージしているものに大きな乖離がないかを確認することが大事です。

―― 大学卒業後、専門学校にキャリア進学されていますね。

高校卒業後、4年制大学の社会学部に進学しました。3年次の時に、「リーマン・ショック」が発生したこともあって、大学卒業後に就職するよりも、むしろ以前から好きだった絵を学びたい気持ちが高まってきました。通っていたデッサン教室の先生に相談したところ「行くなら桑沢デザイン研究所が良いのでは」とうかがって、受験しました。
いまになって専門学校に行く意味を考えた時、私の場合は「自分の中で抽象的だったことが具体的になった」という点が大きかったように思います。マンガやイラスト、デザインに関する仕事をしたいというフワっとした動機で再進学しましたが、研究所時代に、デザインとイラストの違いであったり、卒業制作の展示を経てライフワークを見つけたりすることができました。

―― このお仕事に就くための心構えを教えてください。

ある程度適当に取り組むことができると良いと思います。こだわり過ぎて、いただいたオーダーの提出が間に合わないとなると何にもなりません。ある程度、“これくらいでいいや”で切り上げる。でも、いい加減じゃない。もちろん、仕事を途中で投げ出さない責任感は必要です。

―― 今後の目標をどこに置いていますか?

鉄道の中でも、特に地方の私鉄やローカル線が好きなので、一緒に盛り上げていく存在になれたら素敵ですよね。

―― 高校生にメッセージをお願いします。

自分の経験を踏まえると、就職は一度したほうがいいと思います。就職をすると、お金をもらいながら仕事やマナーを教えてもらえるし、経験を積ませてもらえます。また、イラストの仕事をする上で重要な人脈を広げることもできます。私自身、卒業後に就職をせずフリーランスになりましたが、基本的なマナーやメールの文章などは自分で調べたり、取引先の人たちとのやり取りをしたりする中で身につけていきました。独立はいつでもできるため、最初にしっかりと就職して社会人経験を積むことにも大きな意味があるように思います。

フリーペーパーがつないだ縁

出身校である桑沢デザイン研究所の卒業後、当初は仕事がなく、デザイン事務所でアルバイトをしながら車内スケッチをまとめたフリーペーパーを作って配っていたという大崎さん。「とにかく自分の活動を知ってもらうために作りました。これをお渡しした鉄道ジャーナリストの方が雑誌『旅と鉄道』の関係者にも見せてくださったことで、連載の仕事につながりました」と、当時を振り返ります。
連載をきっかけに、編集者の目にとまるようになり、仕事の依頼が舞い込み始めたといいます。連載は10年目を迎え、現在は単行本化もされています。
「これからも鉄道に関する依頼が増えるようになると嬉しく思います」と、語ってくれました。


インタビュアー:『進路新聞』第56号(令和5年10月10日発行)掲載
記事提供:大学新聞社
画像提供:大崎メグミ氏
<令和5年10月10日発行>


卒業生一覧に戻る