プロダクトデザインとは
プロダクトデザインの仕事とは
プロダクトデザインとは、プロダクト(生産品・製品)をデザインする仕事です。
生活用品や家電製品、インテリア製品、大きなものになると自動車や飛行機など輸送機器まで、専門の知識も生かしながら、あらゆる製品をデザインします。
専門的な知識・技術に加えて美的センスが必要とされる仕事であるため、プロダクトデザイナーを目指す場合には専門学校等で造形と思考を学び、メーカーやプロダクトデザイン事務所に就職する流れが一般的です。
メーカー各社がデザインの重要性を強く感じている現代で、時代の要求に応える提案ができるプロダクトデザイナーの需要は、今後も伸びていくことが期待されます。
プロダクトデザイナーの働き方
需要の高まっているプロダクトデザイナーですが、その働き方はどのようになっているのでしょうか。
プロダクトデザイナーの活躍の場としては、主にメーカーに所属するインハウスデザイナーとデザイン事務所に所属するデザインスタッフ、独立してフリーランスデザイナーとして活動していくことが挙げられます。
それぞれ少しずつ働き方が違うので異なる部分に焦点をあてながら紹介していきます。
インハウスデザイナー
まず、プロダクトデザイナーの活躍の場としてあげられるのがメーカーのデザイン部門などに所属するインハウスデザイナーです。
商品開発を手掛けている企業の多くにはデザイン部門があり、そこにプロダクトデザイナーとして就職します。
企業によってはデザインを外注している企業もあるため、プロダクトデザインを専門に手掛けているデザイン事務所などと協業して自社の製品デザインを行います。
デザイン事務所デザインスタッフ
デザイン事務所の仕事は、プロダクトデザインだけでなく、インテリアデザインからグラフィックデザイン、建築デザイン等々のジャンルがあり、それぞれに特化したデザインスタッフが協業して総合的にデザインを行います。
デザイン事務所での仕事内容は主にデザイン業務で、インハウスデザイナーと同様にプロダクトデザインの実務や企画提案業務を行いますが、ワークショップの計画・企画・運営や、企業の製品開発コンサルティング・ブランディングなどを行うことも多いです。
フリーランスデザイナー
メーカーなどの企業に勤務する(インハウスデザイナー)かプロダクトデザイン事務所に所属して(デザインスタッフ)経験を積んだ後に独立してフリーランスデザイナーとして活躍する人も多くいます。
将来的に独立したいと考えるのであれば、その業界や業種の構造・専門的知識やスキルをしっかり身につけて実績を重ねながら、業務の依頼者(クライアント)を確保する経営力も磨く必要があります。
多様な人脈を広げていくことも必要だといえるでしょう。
インダストリアルデザインとの違い
「プロダクトデザイン」とよく比較される言葉として「インダストリアルデザイン」があります。
インダストリアルデザインは機械工業的な大量生産を想定した工業製品のデザインを指すことが多い一方、プロダクトデザインではいわゆる広く製品のデザインを意味し、工業製品の他、地場産業などの伝統的工芸品や手工芸品なども含む少量生産の製品も含んでいます。
ただプロダクトデザインもインダストリアルデザインも、使う人がより良い暮らしを送るための道具のデザインという点では同じです。
プロダクトデザインの実務
プロダクトデザインとプロダクトデザイナーについて大まかに紹介してきましたが、プロダクトデザインの実務はどのようになっているのでしょうか。
ここからはプロダクトデザインの実務例を工程ごとに紹介していきます。
コンセプト設定・ターゲット想定
まずは製品のコンセプト(企画の意図)を設定し、ターゲット(使用者や使用環境)の想定をしていきます。
誰がどんな環境でどのようなものを使用するかによって道具の考え方やデザインが大きく異なってくるので、最初にその指針を決めるところから始めます。
メーカーの開発担当が決めることもありますが、プロダクトデザイナーとが提案をしてさらに案を練ることもあります。
使用者や使用環境を想定してコンセプトを定めていくことは、プロダクトデザインに限らずデザイン全般において重要な作業です。
調査
デザインにおける調査は大きく3つあります。
まず、製品をだれがどのように使用するのかどんな要望があるのか、調査をします。
この調査は「観察・オブザベーション」です。この観察調査をもとに製品アイデアや製品コンセプトを立案します。
次に立案したアイデアやコンセプト、どんな製品が受け入れられるのかなど、調査をします。使用想定や市場動向など、これらの調査が「仮説・リサーチ」です。
コンセプトやアイデアを具体化させ実際に動作する模型や大きさを確認する試作品などで実証や実験を行う調査が、「検証・サーベイ」です。
デザイン調査を行なっているコンサルタントに、調査を依頼することもあります。
調査は、以降のデザイン作業の間に何度も行われます。
ラフスケッチの作成
それぞれの調査をもとに企画書やラフスケッチの作成を行います。
開発担当や技術者、設計担当などが話し合い、案を絞ることで最終的なデザインに近づけていくために何度も協議・修正を行いながら大まかなデザイン方針を定めます。
また、次の工程である模型の作成を併行し検討を進めることも多いです。
模型の作成
ラフスケッチをもとに模型の作成を行います。
プロトタイピングと呼ばれるこの模型作成の作業を通して使用感や印象の体感ができ、デザインの完成度に大きく影響します。
ここで大きな修正が必要になる場合もあるので、気が抜けない重要な確認作業です。
模型を使った検証調査を行い、デザインの変更や修正に反映させていきます。
修正
ラフスケッチや模型の段階で多くの意見や要望を取り入れて、修正をします。
細かい修正はもちろん、必要があれば大きな修正や変更を行っていきます。
模型の作成は製品の構想を具現化させ、量産に向けた設計図の作成に移る確認作業という気持ちで取り組まなければなりません。
設計図作成
模型による確認を経てデザインが決定したら、設計担当者が量産に向けた設計図を作ります。
この設計図をもとに最終モデルを作り、デザインや機能に問題がないことを確認し、いよいよ生産に入ります。
生産
設計図をもとに、実際にデザインしたものが製品として生産されます。
製品の部品の多くは機械で生産するので、そのための金型や専用の製造機械が作られることもあります。
製品として生産されれば、自分がデザインしたものが実際に形になり多くの人の暮らしに役立つので、大きな達成感があります。そしてその責任も重大です。
プロダクトデザインに必要な知識とは
プロダクトデザインの実務の流れを紹介してきましたが、これらを行うために必要な知識やスキルとはどんなものなのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
観察と気づき
プロダクトデザインは、その製品を使う人がより良い暮らしを送るためのデザインです。
そのため、どんな製品がどんな人に求められているか知ることは、非常に重要です。
発想法
プロダクトデザインのアイデアを出せるようになるには、センスや才能に頼るのではなく、どのように発想するかという方法を身につけることが大切です。
あらゆる物事を常に観察し、疑問を持ちその解決策を考える考察力と行動力が発想法の原点です。
プロのプロダクトデザイナーから教わったり、複数人でディスカッションをしたりといった方法で発想法を学びましょう。
素材・加工法
素材は、製品の色や仕上げ、手触り、質感などにプロダクトデザインとして大きく影響するため、特性や加工方法、環境への配慮など、素材に関するさまざまな知識も必要です。
人間工学
人間工学とは機械や装置を人間が使いやすいように設計するためにもっとも重要であり、ユーザーの使い心地を考える上で忘れてはならない設計思想です。
人間にとってどのようなことが自然で使い心地が良いか、そしてどのように道具の形に表現するのか、プロダクトデザイナーとしての力が最も問われます。
スケッチ・製図
頭の中に描くイメージを伝えるのに必要な伝達表現手段がスケッチ・製図です。
デザインの協議をする際に他の人が見てわかりやすく、正確に表現する手法としてスケッチ・製図は必要な伝達表現スキルです。
モデリング
製品の完成イメージを立体的に具体化させます。
近年では、デジタルソフトを使って実際にどのような立体物をつくるのかを仮想的に捉えるために3D(三次元)モデルを作成する場合も増えています。
この3Dモデルには多くの情報を与えることが可能なので、2D(二次元)の図面よりも多くの検証や解析ができるため、近年のデザイン業界では欠かせないツールとなっています。
マーケティング
市場における製品のデザイン・需要について調査を行うスキルも、プロダクトデザインでは欠かせません。
マーケティングという調査を通して、製品は商品となります。
まとめ
プロダクトデザインとプロダクトデザイナーについて紹介してきました。
プロダクトデザインは様々なジャンルの製品をデザインするため幅広い知識とスキルが必要でした。
ただものの色や形を決めるだけでなく、人と行為と道具の関係を正しく理解し、設計・生産・流通といった工程にも深く関わり、技術者や販売担当者など関連スタッフと協力しながら、ひとつの道具を製品として完成させる、私たちの暮らしに深く携わる仕事です。