【月刊インタビュー】桑沢卒の素敵なあのひと
今注目のクリエイターにお話を伺う連載がスタート。記念すべき第1回目は、ファッションとイラストを融合させて女の子の憧れを表現するあのひとです!

 
         


イラストレーター ニシイズミユカさん

         

桑沢デザイン研究所 総合デザイン科 ファッションデザイン専攻卒業。
テキスタイルとファッションデザイナーの経験を活かし、
数々の企業のコラボや化粧品パッケージ、広告、ファッション誌、似顔絵イベントなどで活躍中。
自身の私服やヘアアレンジのイラストをまとめた書籍「TOKYO GIRL’ S FASHION DIARY」が実業之日本社より発売中。




―― 今回はオンラインでのインタビューになりますが、宜しくお願いします。

宜しくお願いします。このインタビューのために桑沢時代の課題も用意していて、足元にいっぱい転がっています(笑)

―― 今年度の桑沢ポスターを描いていただきましたが、特に表現したいテーマはありましたか?

自分が桑沢生だったことに着目して、その時見ていた景色や印象的な風景を写真のように切り取ってみたいと思いました。今回細切れでイラストを描いてみたのはそういった理由からです。

デザインを学ぶ高校生が、桑沢で得た「刺激」と「意識」

―― 早速ですが、桑沢入学以前のお話を聞かせてください。

静岡県浜松市の出身で、地元の高校を卒業後すぐ桑沢に入学しました。高校時代はいくつかブログサービスが流行っていて、今のInstagram感覚で自分の作品を投稿していましたね。絵を描くことが幼い頃から好きだったので、デザイン科のある高校に進学しました。2年生からは染色を専攻し、ひたすら布を染める日々を送っていました。
かなり早い段階でデザインの仕事に就きたいと思っていたので、高校受験前から基礎的なデザインの勉強をしていました。高校時代はデッサンの授業もあれば製図の授業もあって、色彩構成もあったし、桑沢でいう基礎造形みたいな内容もざっくりですが学んでいました。その中で自分で制作した作品もブログで発信していましたが、今振り返ると少し恥ずかしいです(笑)。

―― 当時反応やコメントはありましたか?

そうですね。同世代が多くて、のちに桑沢の同級生になる子も多かったです。入学前に連絡を取り合って会ったりもしました。あと当時から服とイラストが好きだったので、服が好きな人とも繋がっていました。イラストレーターとして活動するようになってからは、当時知り合った方がイベントに来てくださることもあり、とても嬉しいです。

―― ちなみに桑沢は第一希望だったんですか?

桑沢を第一希望に決めたのはかなりギリギリでした。2年生の夏までは美術予備校の夏期講習に通って美大を目指していたんですけど、桑沢は指定校推薦の枠があったんです。早く働きたかったこともあり3年制というのが魅力的だったし、なによりファッションもイラストも好きで、出願の段階で専攻を1つに絞れないなと思って。桑沢は1年次に4つの分野を勉強できるので、自分のペースにあっているなと思い第一希望にしました。
あと、田舎で過ごしていた高校生としては、「渋谷」という土地がとても魅力的でした。著名なデザイナーの方々を多く輩出していることも知り、こんな選択肢もあったんだと進路を決定しました。

―― 1年生のときのクラスはどんな人たちがいましたか?

大学を卒業したり働いたりしてから桑沢に入学した人も多かったです。もちろん現役で入学したクラスメイトもいますが、様々な年齢層の学生がいたと思います。

―― 1年次で特に印象に残っている授業はありますか?

中学・高校で平面的な作品を制作した経験は何度かあったのですが、立体的な感覚で作り上げていくという経験が少なかったんです。ハンドスカルプチャーで木を削ったり磨いたり、プロダクトデザインの授業で取っ手を作ったり、彫塑で粘土を触ったりした経験は鮮烈に覚えてます。その当時は楽しかったというより、苦手意識が強かった印象です(笑)。

―― ハンドスカルプチャーでは最終講評でもいろんな形が並んでいて、どれがいいものなのかわからなくなりますよね。

はい。それこそ自分の中にあった自信のようなものが崩壊しましたね(笑)。デザインへの意識が変わった瞬間だと思います。高校時代は、各々が作ったものに対して「いいね」「それもいいね」みたい感じで、まだ平和の畑だったというか。でもハンドスカルプチャーの授業を経験して、デザイナーを志した人たちの目線ってこういう感じなんだとか、いろんな意味ですごく刺激を受けた一年でした。そういう時間があったからこそ、自分に足りないところや、こういうことが好きで得意なんだ、ということがハッキリ感じ取れた気がします。

夢中になったファッションデザインの楽しさ

―― 1年生の後半にあるファッションの授業はどうでしたか?

もうとにかく楽しかったですね、これだ!って感じで。それまで心の9割はグラフィックに決めていたんですが、こんな楽しい授業があるんだって一 番実感させられたのがファッションでした。

―― 服を作るにあたり、テーマはありましたか?

「かわいい」がテーマだったと思います。とても自由な授業で様々なアプローチをしている人がいたんですけど、私は白のメンズシャツを作りました。白のメンズシャツって割とトラディショナルな印象でかっちりしていて、“可愛い”と結びつかないなって思ったところから始まって。ピンクとか黄緑の糸で手縫いでステッチしたり、ポケットをキャンディみたいな形にデザインしました。今考えるとかなり稚拙なアプローチですが、メンズシャツでどこまで“可愛い”を表現できるかっていう事を自分なりに表現していたと思います。
コンセプトを組み立てて先生に相談したり、パターンを教えていただいたり、手探りで進めていく中で自分の経験も活かせるところが多々あって、すごく面白かったです。その授業が終わってすぐ2年次からの専攻選択があるんですが、勢いでファッションに決めました。

―― ファッションデザイン専攻に進むと、どういった授業があるのか教えてください。

一番印象的だったのはファッションドローイングという授業です。渋谷の街に飛び出して街ゆく人をスケッチしたり、学生が代わる代わるモデルになり、時間内で何度もドローイングをしていました。その授業で10分程で描いたイラストがこれです。(左下)
ファッションドローイングを通して、この素材はこういう落ち感なんだとか、こういうシワが出るんだとか、ファッション的な要素を重視しながらドローイングをするということがとても新鮮でした。
当時、ファッションの知識が全く無かったので、授業中や授業外に自身で一から調べて服を作ったり、パターンメイキングを勉強しました。3人程のグループを組んでコンセプトの立案から実際の販売を想定したアイテムを制作する、という授業もありました。店頭のマネキンのコーディネートを分析し今季のトレンドについてプレゼンをするマーケティングのような授業もあり、インプットする授業とアウトプットする授業のバリエーションが豊富だったように感じます。みんなで一丸となりファッションコンペにたくさん応募したのもいい思い出です。

▲10分程で描いたドローイング

▲桑沢祭ファッションショーの作品写真(3年生の頃の作品)

―― ファッションデザインを選んだ故の悩みはありましたか?

ファッションを選択した事への悩みや不満は無かったです。ただ、最初の話に戻りますが、立体で表現をすることの難しさを痛感していました。平面でデザインができても立体では思ったように表現できないというような悩みを常に抱いていて、自身の実力不足を痛感する機会がとても多かったです。また、ファッションイラストを描き続けたいという気持ちが強く「果たして私はデザイナーになりたいのだろうか…」という苦悩はずっとありました。流行がすぐに入れ替わるアパレル業界のサイクルの中で果たしてやっていけるのか、という将来への漠然とした不安を抱きながら2年間を過ごしていました。

―― 悩みながらも3年次になるとゼミ選択がありますよね。

ゼミは2つあったのですが、私は物語を持つテキスタイルやコスチュームをデザインする コンセプチュアルなゼミを選択しました。”生きるための衣服”というテーマについて常に自問自答をし、時には辞書を開いて言葉の意味を探りながらコンセプトを立案し作品を制作する、という流れを約1年間コンスタントに続けていたので、今まで体験したこと無いことばかりで、桑沢に入ってから一番苦しい時期だったかもしれないです(笑)。
桑沢祭のファッションショーでニットの服を制作した経験から、卒業制作ではニットの技法を用いて「心のパズル」という作品を作りました。

―― 桑沢ではニットの授業があるんですか?

2年次の授業でニットに触れる機会がありました。パターンを引くのは正直苦手でしたが、ニットは頭の中に思い描いたパターンを編みながら表現できるところがとても気に入っていました。学生時代は主に服を編んでいたのですが、今はなぜか架空の花を編んでます(笑)

苦難が続いた就職活動。そこで気付いた桑沢生の強み

―― 卒制と同時に就活が始まりますが、在学中は何社か受けられたんですか?

最終的に受けたのは4社くらいでした。当時は靴下のデザイナーになりたかったんです。機能性と実用性に優れた靴下には元々とても興味があって、自身のニットや染色の経験を活かしたいという思いもあり、求人を探して何社か説明会に伺いました。ただ、専門性という意味では、一般アパレルとは異なるところに位置している分野ですからね。専門卒で採用してくれるところがとにかく少なくて。方向性を変えて一般アパレルの会社も受けましたが、結局全て最終面接で落ちてしまって。自分自身だけで無く自分が制作した作品まで否定されたかのように思ってしまって、当時はかなり落ち込みました。
そうこうしている内に卒展の時期になってしまい、卒業までに決まらないかもしれない…という時に、ユニフォームデザインの会社から合格通知をいただいて。最終的にそちらの会社に就職しました。

―― 元々ユニフォームが魅力的だなぁっていう気持ちはありましたか?

先ほどの話にもありましたが、トレンドの服を作り続けるということはとても魅力的で輝かしい反面、自分自身がそのサイクルの中で実際やっていけるのかという不安がずっとあったんです。ユニフォームはトレンドよりも利便性や合理性が重要視されているので、自分自身の考えに近いものがあると感じていました。

―― 就活に当たり、進路支援課のサポートは受けていましたか?

いや、全て独断でやっていましたね(笑)。壁に貼ってある求人を見て、こんな求人があるんだ〜って思っていたくらいです。今思うと、桑沢が主催している面接の練習とか受けておけばよかったなと思います。ただ、ファッションデザイン専攻の中村先生に、桑沢の先輩がいる会社を紹介していただいたり、ファッション科のサポートにとても助けていただきました。

―― 就活をする中で桑沢生の強みのようなものは感じましたか?

桑沢生はポートフォリオなどを活用した作品の見せ方が上手だと感じました。様々なファッションのコンペに応募する中で、洋服作りにおける技術では他の有名な専門学校に比べて正直まだまだだなと実感することが多かったのですが、与えられた課題への対応というか、こういう風に考えてこういうデザインにしました、とていう「見せ方」がとても上手だなとは感じていました。
他学校のポートフォリオをたくさん見たわけではないですが、桑沢生は世界観にこだわってまず製本から始めている人が多かった気がします。きっとグラフィックやプロダクトの経験が活かされているんだと思います。

    ▲就活時のポートフォリオ

ユニフォームデザイナーとしての仕事と、イラストレーターとしての独立

―― 就職されたユニフォームの会社は、何年くらい勤められたんですか?

4年半勤めました。私が配属されたのはビジネスユニフォームという部署です。ホテルのドアマンとか、薬局で働いている人とか、働いてる人の服のデザインや、生地やテキスタイルの企画もしていました。他にはスクールユニフォームという部署もあって、お手伝いをするような形で学生服のデザインや、スカートなどのテキスタイルを制作していました。
実際に働いてみて思ったのは、やはりユニフォームにはトレンドがすぐに反映されるわけではなくて、良くも悪くも変わらない部分が多い業界なんだなということです。業界にもよりますが一度デザインが決定すれば長くご着用いただけることが多く、生産数量が膨大な案件も多い反面、価格や物性面(生地の丈夫さなど)にかなりシビアな世界なので、同じ服という括りでもアパレルの企業とは環境が異なるように感じました。入社当初はユニフォームの知識がかなり少なく常に手探りの状態でしたね。

―― 4年半ほど会社員をされてから、イラストレーターに転向するきっかけはあったんですか?

会社員をしながらも、イラストを描き続けたいという気持ちはあって、発表の場としてInstagramを活用していました。ユニフォームのお仕事で担当していた提案用のイラストとは別に、トレンドを意識したイラストが描きたい!という気持ちがあったかもしれないです。
最後の1年は、本業と並行してイラストのお仕事を受けていました。最初にいただいたのは、名古屋の百貨店で無料配布される冊子の連載企画のイラストでした。あとは化粧水の包装紙やファッション誌の挿絵のお仕事も担当させていただきました。
ユニフォームは代理店などを通して案件を受けることが多かったので、社名やデザイナー名を伏せる形でデザインを提出して生産して、ということを常に繰り返していました。一方でイラストのお仕事では自身が一から案件を受けて、自分の作品や名前が雑誌に掲載されたりして、その事が純粋に嬉しかったです。ユニフォームのお仕事もとてもやりがいがありましたが、それとはまた異なる達成感のようなものはありましたね。
ただ、兼業を続けていく中で、とてもありがたいことにイラストのご依頼を定期的に頂けるようになり、本業とのバランスが取りづらく体調を崩すことが多々ありました。

―― 独立について考え始めたということですね。

はい。少しずつ依頼が増えて、もしかしたら独立できるタイミングなんじゃないかとは思っていました。でも会社員をやめて独立するかどうか、独立して生活ができるのか、という事に苦悩していました。でも「何が好きか」「何をしたいか」を考えると、やはり絵を描くことが昔から好きで、これを仕事にしたいと強く思えたことが独立きっかけになりました。自身の作品にちゃんと向き合って、様々な角度から考えて手を動かす時間が自分には必要だなということに気がついて。今は独立してから2年程経ちました。
今はSNSを通じてお仕事の依頼がくることが多いですね。いただいた案件を納めながら、それとは別に自分が描きたいイラストや制作物も制作しています。

―― ありがとうございます。さらに今後チャレンジしてみたい仕事はありますか?

ないものねだりのように思われるかもしれませんが、フリーランスになってから、チームで働くことの魅力を改めて感じています。現在は1人で制作作業をすることが多いのですが、一緒に商品開発をしたり販売方法を考えたり、今後はもう少し多角的なアプローチで制作ができたらなと考えています。また個展などで自身の作品を発表できる場を増やしていきたいなと思っています。
イラストを描くことはとても好きですが、桑沢時代に学んだファッションやニット、グラフィックなど、自分の中にある引き出しを活かしてイラスト以外のことにも積極的にチャレンジしていきたいですね。

▲書籍「TOKYO GIRL’ S FASHION DIARY」

▲自主制作

▲自主制作のドローイング

インタビュアー:はやしわかな
桑沢デザイン研究所 総合デザイン科 プロダクトデザイン専攻卒業。
海外で働きたい気持ちが強く、卒業後すぐに海外就職。
建築系3Dアプリの開発に携わり、デザイナーやエンジニアをサポートする仕事に就いている。



‐ vol.2 グラフィックデザイナー/アートディレクター渡辺 和音さん ‐