2012
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学校案内書アーカイブ 1954-2024
本ページでは、桑沢デザイン研究所の学校案内書の70年にわたる歴史をご紹介します。 |
1985
あの頃、桑沢の学校案内書のエディトリアルデザインは表紙も含め、グラフィックデザイン部会の先輩・芦部圀昭先生が長く制作されてましたが、とうとう私にお鉢が回って来たのが85.86年版です。専任講師10年目の頃で、学校案内書の編集スタッフにドレスデザイン部会の先生が一緒に参加していました。85年版の表紙にある織り紐はそのドレス~部会の金子祥江先生が南米(グァテマラ)に研修旅行に行ったときに資料として買ってきたもので、鮮やかな原色で幾何学模様の面白い柄なので表紙に使わせてもらいました。紐は何種類かを並べ変えていろいろと撮影し、見開きで見ても綺麗なものを最終的に決めました。
ー山上良雄
1986
40年ほども昔とは言え、表紙に赤いコスチュームのファッション写真でゆくことや、モデルを撮影している現場の記憶が無いのは、写真部会の鈴木達也先生やドレスデザイン部会の吉田啓子先生に任せきりだったせいなのか?齢のせいなのか?(昔は学校案内書のデザイン作業は事務方を交えた内部の専任教員の仕事でしたが、ある年代から外部のデザイン事務所に外注されるようになったのです)確かに学校案内書の過去の表紙は幾何学的図形やタイポグラフィック(文字を要素とする構成)的なものが多く人物の写真を使ったものは見受けられません。この年度は何か大胆に表紙を変えたいという共通意識があったと思われます。
ー山上良雄
2008
桑沢デザイン研究所の特質すべき点はバウハウスの流れを汲む基礎造形にあります。表紙には正方形が3つ。そう。黄金比分割です。そしてマックス・ビルの色彩。中面のタイポグラフィは桑沢にも訪れた事のあるヨゼフ・ミュラーブロックマンのグリッドシステムを基本にフォントはシャルル・ド・ゴール空港のサインが元になったフルティガー。
私が担当した時代は多くの学校と共同で学校説明会が開かれており、そこで他校に負けない遠目でもアピールする表紙のビジュアルが求められていました。そして、手に取った時には緻密さを感じるエディトリアル。その意味で、大胆かつ繊細なデザインが求められており、その解を目指したデザインになっています。
ーGrid Co., Ltd. 八十島博明
2011
学校の良さを〝語る〟ということより、生の雰囲気を〝見せる〟ことの方が、
桑沢の持っているものが正確に伝わるのでは? ということで、新たな試みとして「写真集」を同梱しました。
また、プレゼントをもらった時のように、開ける時のワクワク感を演出したかったので、
ボックス型にして、文字情報は最小限にしました。
素朴な外箱を開けると、ビビッドな色が目に飛び込んでくる仕掛けです。
さらに文字は手書きの字幕文字を使用し、冊子の中身にもふんだんに使用しています。
創造物はやはり肉体を通して生み出されたものの方が、瞬時に心の奥に染み込んでいくものだと思います。
この学校案内が、なにか覚悟を決めるきっかけになれたならと、祈るような気持ちで制作しました。
母校ということもありまして、個人的にも愛情をたっぷり注いだ大好きな学校案内です。
関わってくださったみなさまにも、ここで感謝を伝えたいと思います。
― Allright Graphics 髙田唯
2012
2015
身にまとう布から生活を紐解き、日々の暮らしに寄り添うデザインを模索する。そんな桑沢の原点、想いが学校案内にはあります。そして、着物を保管するために包み込む一枚の紙のことを「タトウ(包う)」と呼びます。包むという行為は、内部のモノを守るという機能だけでなく、丁寧さを伝える所作にもなり得ます。桑沢の想い(学校案内)と意思をタトウで丁寧に包み込み、将来の桑沢生に届けようと考えました。広げた時に中から現れる色彩の重なりで桑沢の魅力と驚きを伝えられればと思っています。
ーOUTSIGHT GRAPHICS 後藤圭介
2016
2017
2018
ADを担当するにあたり、学内で制作に関わる方々と「言葉」と「写真」について話したことを覚えています。言葉に関しては、大仰なことを言わず、今(当時)の桑沢を過不足なく伝える表現であること。写真に関しては、デザインに寡黙に没頭する人の熱量や視線を感じるものであること。造本のギミックやタイポグラフィはあくまでそれら視覚的な要素(言葉、写真)に寄与するものとして考え、手触りや重さ(⇄軽さ)に注意を払う。結果的に上記のような考え方は、こちらが鼻息荒く言うまでもなく「桑沢」という歴史がつくった磁場においてある種の「ムード」としてすでに存在していて、意外なほどすんなり受け入れられたと記憶しています。
ー本庄浩剛
2019
2020
2021
今やスマートフォンが主流になり、様々なものが一つでまかなえるようになってきました。テレビをもたない生活をする人も増えるなど、今までの概念が急激に変わってきています。個性をどう捉えるかも変化しています。生活や個々の価値観が変わってきている中、デザインは未来に向けてどうしていくべきか。今年度の学校案内書は、各冊子の表紙が紙、各冊子の裏紙が封筒で各アルミで覆い、極力人間的要素を無くし、工場出荷時のようなデフォルトの美しさを追求しました。要素を加えすぎないように、そこに新しい個性が見えてくるように。今からデザインと向き合う学生に、これから先について思考できる、「未来」を感じる佇まいを目指しました。
アートディレクション/デザイン:There There 渡辺和音
2022
昨今私たちの生活はすっかり様変わりしました。オンラインでのコミュニケーションが増え、現実とバーチャルの境はますます曖昧になりつつあります。そういう時代背景を念頭に、今回の学校案内はあえてデジタルと認識していたものをアナログの紙で表現し、そこに生まれる違和感を表現しました。
現実の世界で持つ違和感とその面白さをこれからの学生に向けて、新しい興味・関心のきっかけになればと思います。
昨年度に引き続き、それぞれの情報をひろいやすくするために内容毎に分冊とし、各冊子は黒の表情を変え、プロダクト製品のような佇まいにしました。
アートディレクション/デザイン:There There 渡辺和音
2023
2024
学校案内を手に取って頂いた時に、単純ですが「ワクワク」するような造本設計を意識しました。
内容ごとに紙面のサイズと紙の質感も変化する仕様にすることで、めくる度に楽しさを感じてもらえると思います。ページ構成が複雑な分、文字組みは読みやすくなるようシンプルなデザインにしています。
また、上下にページが分かれているカリキュラムは、知識や技術の基礎と専門を並行して学んでいく桑沢の教育理念ともリンクする仕様です。
桑沢の魅力、本とデザインの可能性を少しでも感じて頂ければと思います。
ー白い立体 吉田昌平
2025
前年度と同様、〈桑沢〉の魅力を伝えると同時に、本・紙・印刷・製本の魅力も伝えられたらという思いで制作しました。
以前は誰もが毎日のように触れていた『新聞紙』を用いて、今回の造本設計をしております。
新聞紙の特徴は、端に小さな丸とギザギザの断裁面が残っていることです。
この仕様は、ロール状になった巻取り紙に印刷後、連続して印刷されている紙面を一部ずつ分けるために、新聞の下部分を横一列に並んだ針で突き通して引っ張り、のこぎり状のカッターでカットすることにより生まれます。
そうした新聞印刷特有の技術も一緒に製本したいという狙いで、今回は本の端にギザギザと小さな丸を残しました。
「紙離れ」が言われるようになって久しい現代社会ですが、もしかしたら何年後かにはこの印刷方法が消滅している可能性もゼロではありません。今後どのように本や印刷、製本に向き合っていくのか、本書を手に取るみなさんと一緒に考えていけたら嬉しいなという気持ちも込めてデザインしています。
また今回は、〈桑沢〉卒業生の草野庸子さんに写真を撮っていただきました。100ページもある写真から桑沢の魅力を感じていただけたらと思います。
新聞紙は、しなやかで柔らかいです。少し端が折れたりヨレたりしても、独特の風合いが醸す魅力は他に類を見ません。どんどんめくって自分だけの質感を楽しんでください。
ー白い立体 吉田昌平氏
exhibition |
2024年3月-5月にかけて70周年を記念して本校1F展示スペース「くわまど」にて、70年分の学校案内書を展示しました。期間中は一部現物と複製本を自由に閲覧できるようにし、設立当初からの変わらない教育理念、授業、校風を感じていただけたようです。 |