学校法人桑沢学園は、2017年に創立60周年を迎えました。この節目を記念して、『「ふつう」をつくったデザイナー 桑澤洋子 活動と教育の軌跡』を開催致します。
学園創立60周年にあたる2017年は、学園創立者・桑澤洋子の没後40年にもあたります。デザイナーとして、また造形教育者として、桑澤は大きな足跡を残しました。
本展覧会では、彼女の代名詞でもあった「ふだん着のデザイナー」としての作品を再考し、桑澤洋子の目指した「社会とつながるデザイン」、デザインにおける「ふつうの良さ」の意味を考えます。
今回は、桑澤がデザインを手がけた1964年東京オリンピック競技要員ユニフォームの再制作と遺作を初公開するほか、本学園の教育とつながり深いバウハウスを象徴するバウハウス・ダンスをアレンジしたフロア・ショーをおこないます。
桑澤が日常に注いだまなざしを、さまざまな角度からご覧ください。
1930年代から建築・室内設計・服飾などのデザインジャーナリズムの世界で活躍。その中で、1919年に建築家グロピウスによってワイマールに設立された、造形芸術の総合学校「バウハウス」の存在を知り、その影響を強く受ける。
機能性や合理性を追求したデザイン活動をすすめる中で、デザインの総合的な基礎教育と専門教育の重要さを痛感し、1954年、各界気鋭の教育者、芸術家、デザイナーたちの協力を得て、当時としては画期的なデザインの専門学校「桑沢デザイン研究所」を設立。さらに高度な造形教育を追求する場として1966年には「東京造形大学」を設立、学長・理事長に就任。
試行錯誤をおそれない、しなやかさの中にも強さを持った独特の教育方法で多くの人材を育て、卒業生たちは広い領域で活躍、その業績は高く評価されている。
著書に『ふだん着のデザイナー』(1957年、平凡社)、『桑澤洋子の服飾デザイン』(1977年、婦人画報社)など。
1973年には長年の教育活動の功績により藍綬褒章授章。
1977年4月12日逝去(享年66歳)。
「ふつう」をつくるということ
「ふつう」のものやことに気づくのはむずかしく、「ふつう」を作ることもまた、むずかしいと言えます。なぜなら「ふつう」とは、高みを目指してつくり上げたものが、いつの間にか常態化した結果だからです。
桑澤洋子は常に生活の高みを目指し、「ふつう」を作り続けてきました。それは彼女が、「ふつう」の人々の生活に寄りそうまなざしを、常にもとうとしたからではないでしょうか。
自分のまなざしが行き渡るように、桑澤は作る側と使う側のデザインの淵に立ち続けました。それは彼女なりのデザイナーとしての覚悟だったと思います。
ものを生み出す人間に覚悟を問い続ける。そんな桑澤に気っ風の良さを感じずにはいられません。