日本で最初の『デザイン』学校で未来を創造する【専門学校桑沢デザイン研究所】

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【月刊インタビュー】 桑沢卒の素敵なあのひと
今注目のクリエイターにお話を伺う連載。第13回目は、玩具やロボットのデザインを手がけ、自身でバイクを開発しているプロダクトデザイナーのあのひとです!


プロダクトデザイナー 生駒タカミツさん

桑沢デザイン研究所 夜間部 専攻デザイン科 プロダクトデザイン専攻卒業。
株式会社タカラトミーで玩具の試作や「トランスフォーマー」の海外事業を担当後、株式会社Cerevoに参画しIot家電製品の開発を行う。
2016年からはGROOVE X株式会社にて、製品の試作、デザインを担当し、家族型ロボット「LOVOT」の開発に携わり、個人活動として電動折りたたみバイク「タタメルバイク(仮称)」の製作を始める。2021年ICOMA Inc.を創業。

専門学校桑沢デザイン研究所 非常勤講師
総務省 異能vation 2021年度「破壊的な挑戦部門」採択

―― 開発しているポータブル電源付き折りたたみバイク、タタメルバイクについて教えてください。

5-6年前、海外から電動バイクが輸入され始めた頃からイメージはありました。そのデザインを見た時、自分ならどうするだろうと思い、スケッチを始めたのがきっかけです。CADで箱バイクの機構を作成しTwitterに投稿したところ、1万いいねくらい頂きました。知らない方々から意見をいただいたり、「こんなデザイン欲しいです」と言っていただいたりする体験が、講評で先生やクラスメイトから意見を貰った時以来の感覚ですごく楽しくて、バイクの製品化を意識し始めました。


ミニチュア用のデータだったところからアップデートして、プレゼンシートにまとめたり、走れるモデルにするために部品を調達したりして、当時はまだ走れない状態だったのですが展示会に出展してみました。すると反応がとても良かったので、頑張って製品化しようと思い独立しました。現在は製品化を目指して、生産体制や安全性を検討しているところです。

―― 桑沢デザイン研究所の夜間部プロダクトデザインコースに入学されたきっかけを教えてください。

子どもの頃は、宇宙工学やスペースシャトルにロマンを感じていました。ただ、僕は本質的に技術自体よりも「技術から生まれる形」に興味が強くて、次第にロボットのデザインに興味を持ちました。それからはアニメに出てくるロボットをずっと描いていました。

高校も「将来ロボットをデザインしたいから、建造物のような大きい存在のものを勉強したい」と建築学科に進学して、ドラフターで製図したり図面を描いたりしていました。ただ、その先の進学となると、美大に行きたかったのですが金銭的な理由などがあり難しく、高校卒業後の1年は浪人状態で結構悩んでいました。

そんな中で学校を調べていて、桑沢がデザインの学校としてはすごく評判がいい学校だと2ちゃんねるで知りました(笑)。特に夜間だったら、昼間働きながら奨学金も貰えば自活できそうだと思いました。実際、入学金以外はすべて自分でやり繰りしました。美大の夜間も検討しましたが、学費も全然違いますし、年次が長すぎてもしんどいのかなと思うので、桑沢は魅力的な選択肢でした。

―― アニメーション系の学校も見学されたそうですね。

キャラクターデザインコースのある専門学校も体験入学に行ったのですが、ズレを感じて。業界の方もよく言いますが、アニメの世界は、現実の世界をアニメーション化しているシーンが多いんです。アニメやキャラクターを学んで新しくデザインしようとしても、元ネタは現実世界の製品だったりするので、結局創作物の二次創作みたいになってしまって、つまらなくなりがちなんですよね。

メカデザインは現実に無いものを空想で描き起こさないといけないのですが、デザインの形状的に意味合いのある形を描けるようにならないといけないと考えていました。あくまで空想のものを描くために、リアルを学べる桑沢のプロダクトデザインに行ったのかなと思っています。

もしアニメーションの学校に行っていたら、もっと絵をいっぱい描いて、SF世界などを考えるイラストレーターなどの道にいけたのかもしれません。しかし、人が使うためにはどのような形が良いか、といったデザイナーの考えを知り、後に様々な製品開発に携われたのは、桑沢でプロダクトデザインを学んだおかげだと思っています。

―― 桑沢に入学されてから、印象的だった授業や課題はありますか?

卒業制作ですね。「ロボットを作ります」と言いつつ、良い形が全然思いつかなくて。形が決まらないまま進んでいたのですが、別の授業課題をしているときにコンセントタップの人形を思いついたんです。頭と体が付け替えられる旅行のお供的なプロダクトなのですが、作らないともったいないと思ったので、卒業制作の品評会の2週間くらい前に「変えさせてください」と先生にお願いして、速攻でモデリングして、実際に作品発表をしました。

今ほど話題になっていなかった3Dプリンターでモックアップも作ったりしていました。発想の時点で勝ち、みたいなところがあったので、タタメルバイクに通じる、「こういうアイデアどうですか」という提案だったかなと思います。

―― アルバイトからも多くの学びがあったそうですね。

桑沢に入学してから、1年くらいカメラマンのアシスタントとしてアルバイトしていました。素人なのに採用いただいて、採用理由を社長に詳しく聞いたら、写真学校の専門学生だと勘違いしていたらしいです(笑)。ただその会社でカメラに触れる機会もありましたし、物撮りで光の当て方とか写実的な表現がプロダクトのスケッチに近いところがあって参考になりました。

カメラメーカーの販売員もしたのですが、お客さんと対話することが個人的には良い経験になりました。作る方は学んでいるけど、実際に販売したりしてユーザーの方と対話するところまでは、多くのデザイナーができていないと思います。販売の現場に出ることで、デザイナーが必死に作ったデザインが結局広告でこういう風に処理されて、ユーザーがこれくらいの感覚で買うんだな、というのを見ることができました。

例えば、当時は人気有名人がデジカメの広告をやっていたので、カメラのデザインや性能に興味のなさそうな人も来たんです。使いやすくて渋い商品をオススメしてみたのですが、お客さんは結局広告されている商品を指名買いしていました。その時、デザイナーの力ってどう及ぼせるんだろうと思いましたね。その時に発明的発想、ユニークさは必要だろうと感じて、市場に出回っているものと似たようなデザインはしたくないと思いました。

浪人時代はPC組み立てのアルバイトで製品製造の過程も見たので、この組み立て性は大事だなとか、デザイナーがこだわりすぎたからこういうところで迷惑かけているんだな、ということにも共感ができます。そういう経験もあって、デザイナーに寄りきらずデザインエンジニアのような立場にいることが多いのかなと思います。アニメとかロボットからこの業界に入っているので、本当はアーティスト寄りのつもりではいるんですけどね。

―― 卒業後の進路はどうでしたか?

僕の場合は運が良かったとしかないのですが、卒業間際の1-2月くらいにタカラトミーから「変形機構が好きで、ロボットを描ける人」という求人が来たんです。桑沢の卒業生がタカラトミーにいて、その紹介で求人が来たというのもあるのですが、とてもピンポイントな求人で、対象者がクラス全体を見ても僕しかいなかったので受けてみたら、あっさりアルバイトとして採用が決まりました。

最初はトミカやリカちゃんの乗り物のデザインしていました。手加工でモックアップを作る仕事も多かったので、そこは桑沢のスキルでやり遂げました。桑沢の卒業生も働いており、一緒に仕事をしてスキルを見てもらい、僕の得意そうな仕事を振ってもらったりもしていました。

トランスフォーマーのデザインでは、2週間で10回以上のリテイクもあったりと大変でしたが、才能を発揮できた自信があります(笑)。海外のデザイナーと相談したり、でかい恐竜のアイテムを作ったり、変形機構もキャラクターも自分でデザインするプロダクトもあって、これらをやれたのはタカラトミー ならではだと思いますね。

―― タカラトミー を経て、次の会社に行かれていますね。

ペッパーが出た頃から、ロボットが架空のものでは無くなったなという感触がありました。先人たちがロマンを抱きながらロボットを好き勝手に考えて、その中でガンダムやマジンガーZといった色々なロボットが生まれました。しかし、夢やロマンだと思っていたことが実現できるものに近づいていて、リアルを知れば知るほど、今ある大概のロボットデザインが「本当に作ったら、これはありえないよな」と思ってしまうようになっていました。

ならば自分で本当のロボットを作ってみたいと思っていたところ、以前、自分がやりたいことを相談していた社長がそのことを覚えてくれていて、その社長に誘われる形でCerevoという会社に行きました。

僕が桑沢で授業するときも、「自分がやりたいことがあるのなら、それを明確に言い続けてほしい」と伝えています。僕は多少うるさいと思われるくらい「ロボットが好きだ」と言い続けていたので、中には面倒くさいと思った人もいたかもしれないですが、結果的にはその発言を覚えてくれていた人が、仕事を紹介してくれました。そういう意味でも、個性や関心があることを発信し続けることは大事だと思っています。

Cerevoでは変形するロボットプロジェクターを担当しました。当時はロボットブームが来ており、入社した時に「変形するロボットを考えてくれ」と言われて、家電メーカーらしくプロジェクターを使った新しい投影機を作りました。アメリカの一番大きい電子機器展示会CESでも発表されました。

家電のハードウェアは、玩具と比べてレベルの違うテクノロジーを使わないといけないので、プロジェクター周りの部品を設計したり、電子基板のパーツの外径図を引いて組み立て性を考えたりと、エンジニアのような仕事を全部経験しました。ちなみに、その会社にも桑沢の先輩がいて、話しやすかったです。説明したプロジェクターはその方と作ったものです。

―― その後、GROOVE Xという会社に行かれています。

社長はペッパーの開発に携わられた林要さんです。林さんが同じシェアオフィス内にいらっしゃったので、「僕はこういうロボットを作っているんです」と声をかけたら「そんなことよりうちのロボットを作りに来ない?」って即スカウトされてしまって(笑)。一から作っているデザインエンジニアがいなかったので、貴重な人材として誘っていただけたのかなと思います。

GROOVE XにはGood Design賞でも審査員をされていて、元トヨタのデザイナーである根津孝太さんがメインデザイナーでいました。その方と働くことでプロダクトデザインを学び直したと感じています。

LOVOTという家族型ロボットの開発で、根津さんとデザインを進めていくことになるのですが、僕はデザインアシスタントくらいの立場で関わりました。外見の色合わせをしたり、形状修正をしたり、一番目の合う位置はどこかをミリ単位で調べたりなど、少しずつ調整しながらみんなで評価をしてプロダクトを研ぎ澄ましていく中で、色々な企画の人たちと対話できる良い仕事でした。

ロボットの普及ってハードルが高いのですが、進化したなと思うのは、今までの家電と横並びに見ているのではなく、ある種生き物になってきているところです。UI・UXだと思っていて、「今まで愛着を持つ対象ではなかったプロダクトを、いかに愛着を持ってもらえる存在に引き上げるか」ということをエンジニアとして頑張りました。根津さんと議論しながら、手を動かす側として色々やってきました。

例えば、LOVOTの充電器なのですが、枕やベッドみたいなパネルって機構的には何の意味もないんです。でも、この柔らかそうなパネルがあるだけで、寝床がちゃんとあるイメージができて、大きな木の麓で寝ている子どもの情景が浮かぶと思います。本当はただの円柱でもいいのですが、「LOVOTはユニークな存在だから、何でも合理的に作ればいいわけじゃない」と言って説得しました。

テキスタイルの選定や、LINEスタンプのイラスト、LOVOTカフェの空間デザインなどに携わらせていただきました。ちなみに、 LOVOTの角は緊急停止スイッチとして折れる機構になっているのですが、その特許には発明者としても関わりました。

製品作りが終わってから、工業デザイナーとしてやることが減ってきたので、冒頭でもお話ししたタタメルバイクの会社を創業しました。

―― タタメルバイクの開発で、大切にされていることを教えてください。

若い方達を中心にキックボードが流行っていますが、タイヤも小さくて転びやすいという難点があります。しかし、それでも流行し始めている理由は、気軽で新しいモビリティとして、今までの乗り物と違う文脈だからこそ乗りたい方が多いのかなと思っています。

若い方やバイクに乗ったことのない方も興味を持ってくれるくらい、コンテンツ的なバイクを作りたいと思っています。自分好みに変えられる余白性を持たせたいので、環境的なハードルを超え、かつデザイン的に広がりのある形を考えています。ICOMA Inc.は小さいメーカーなので、フォーマットを作って皆さんにいじって欲しいんです。だからこそオープンな開発をして、部品作成に3Dプリンターを取り入れるなど、カスタムしやすい構成にしています。

―― タタメルバイクの開発をされながら、桑沢で授業も教えていただいています。どのような内容か教えてください。

インターフェースという授業です。僕はテクノロジーを応用したプロダクトを手がけてきましたが、人と機械の中間となるインターフェースに関わる部分がこれからはもっと増えてくると思います。学生には、「インターフェースとは何か」と問いながら、テクノロジーを応用することをテーマに、自由に作りたいジャンルのものを作ってもらっています。とても実験的なので難しく感じる学生の方もいると思いますが、わりと好きなことをしてもらうので、自分の中にこういうアウトプットがあったんだと気付いてもらえたら嬉しいです。

―― 最後に、プロダクトデザイナーを目指す受験生や在校生に、今後どのようなものを作って欲しいですか?

昔は3C(カラーテレビ、エアコン、冷蔵庫)みたいな決まったプロダクトしかいらない時代というか、「無いから欲しい」時代でした。最低限の利便性を得るために働いていた時代から比べて、今は、生き物としては満たされているはずなんです。おいしいもの食べて暮らせているけど、「何か良いもの無いかな」と常に思っているというか、楽しさがどこかに無いかなと探していると感じています。

世の中のサービスが整理されていく方向に行くような絵を世の中は描きがちですが、実際は一人ひとりがいろいろな楽しさ・多様性を求めていると思っていて。そういう中で、新しい価値観を表現して、それをみんなが使えるようにデザインしていくデザイナーがもっと増えていくといいと思っています。全員が同じ方向にまとまっていくのではなくて、価値観を共有できている人同士が刺激しあって、ダイバーシティ社会に対応できるデザイナーになって欲しいですね。

学生を見ているとシンプルという言葉も簡単に使っていますが、シンプルに感じるものも、デザイナーがこだわって考えたデザインの結果ですよね。ぜひ、自分のこだわりを尖らせて欲しいと思っています。テクノロジーや世の中の技術も、自分のこだわりを実現したり、一般の人に興味を持ってもらったりするためにも活用してもらいたいです。


インタビュアー:はやしわかな
桑沢デザイン研究所 総合デザイン科 プロダクトデザイン専攻卒業。
<2022年2月>
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