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2025年度一般入試問題・参考解答

総合デザイン科(昼間部) 一般入試A日程

試験概要

■ 実技試験:表現(180分/200点、用紙サイズ…A3、次の1.2.3から1科目を選択。)
1. 静物デッサン(観察力と描写力)
2. 色彩構成(構成力と色彩感覚)
3. 創造表現(創造・発想力と表現力)
■ 学科試験:一般教養(60分/100点、現代文の理解、時事問題、形の理解など一般常識。)

1. 静物デッサン

【問題】
配付された「リボン」と「箱」と「文字」を自由に組み合わせてモチーフを作り、解答用紙にデッサンしなさい。
※箱のフタは取り外してもよい。
※直線を引くために定規やデスケールなどを使わず、すべてフリーハンドでデッサンすること。

試験時間…180分
解答用紙…M画学
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)タテ・ヨコ自由
描画サイズ…A3(420×297mm)
画材…鉛筆など

【出題意図】
デッサンの基礎能力を問う試験です。
そのモチーフとして箱、リボン、アルファベットの造形物を選定しました。
水平の台の上に、それらのモチーフが乗り、空間が生まれることを意識しながら形を取ること、また、形が変わらないものと自由になるもの、それらの対比関係をどう組み合わせるのか、探究心も求めました。

【評価のポイント】
・紙面の空間の中に存在しているよう、忠実に描いているか
・質感、色の描き分け
・モチーフの特徴である蓋が外れることと、リボンの自由な造形から生まれる空間をダイナミックに表現しているか
・モチーフの構成に工夫が見られるか

モチーフの組み合わせ方に工夫が見える作品です。質感の書き分けも比較的よく描けており、リボンは別のモチーフと絡める工夫をしつつ立体的に作りあげた形は評価できます。しかし全体的にみると、モチーフ同士の組み合わせ方が単調に感じます。また影の部分の描き込みについては設置面の質感を丁寧に描けていると更に良い仕上がりになったことでしょう。

各モチーフの組み合わせにまとまりを感じる作品です。モチーフ同士をバランスよく組み合わせた形は丁寧さを感じます。モチーフそれぞれの質感もよく観察されて書き分けができている様に感じます。箱のモチーフは、少しパースが崩れてるのが気になることと、質感は本来の色を少し感じにくいので影と素材の色を描く際の描き込みが調整できると更によい仕上がりになったと思います。

大胆な構図が印象的な作品です。モチーフの組み合わせ方には工夫を感じますが、もう少し用紙の画面に収まる組み合わせ方を考えられると良かったと思います。全体的にみると、しっかりとしたタッチは良いのですが、影の部分とモチーフが一体化している様に見えてしまうところが残念です。強弱を意識した描き方ができるとモチーフと影を描き分けることができ、更に良い仕上がりになるでしょう。

全体的に丁寧な描き方が印象的な作品です。モチーフの組み合わせ方は動きを感じ、質感の書き分けも丁寧なタッチで描かれ良い印象がもてます。全体的にみると、画面に対して窮屈に収まっていることが気になります。余白をバランスよく取り入れてもよいかもしれません。また、パースにも少し違和感をもちました。リボンの置き方と描き方はもう少し奥行きを意識してあげると、バランスの良い仕上がりになると思います。

2. 色彩構成

【問題】
下記の図形や線を与えられた画面に、指定された数だけ配置し着彩して平面構成しなさい。
※それぞれの図形のサイズは自由。
※図形は元の形ががわかる範囲で画面からはみ出してもよい。
※色数は自由。

試験時間…180分
解答用紙…ハイアビスNEO
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)ヨコ
描画サイズ…373×250mm
画材…絵具・鉛筆・シャープペンシルなど

【出題意図】
指定された図形の特色をよく考え、直線・曲線などの性質や魅力を生かした画面分割と重なりの美しさを表現してください。バランスよく配置・配色する造形能力に加え、自分なりの視点やテーマを意識できているかを確認します。

【評価のポイント】
・それぞれの図形や線の特色をうまく生かして画面に配置できたか。
・それぞれの図形や線により画面の中でバランスや動き、リズムのある画面を表現できているか。
・画面の分割や重なりの特徴を生かして配色されているか。
・画面が美しく丁寧に仕上げられているか。
・出題の条件をすべて満たしているか。

色数は多いのですが、やや画面が単調に感じられます。2つある半円柱の大きさがほぼ同じですので、極端に大きさに差をつけたり、自由曲線の曲線らしさがもっと生かされるとよりメリハリのある面白い構成が出来たのではないでしょうか。配色面においては色の組み合わせをもう少しチャレンジしてみるとなおよかったでしょう。

色数の多い配色やユニークな曲線を活かした分割で、画面を面白く構成することができていますが、モチーフが中心よりに配置されており画面が全体的にやや単調に感じられるので、配色においては明度・彩度のコントラストにもう少し差をつけ、モチーフの大きさに更に差をつけるとより奥行きを感じられるよい作品になったでしょう。

モチーフの大きさに差をつけ大胆に分割されていますが、自由曲線の曲線らしさがもっと生かされるとより面白い構成ができたでしょう。配色に関してはアクセントになる色を設けているのは良いと思うのですが、色数が少なく上手く生かされていないので、分割面を増やしアクセントカラーの配置をもう少し考慮できたらなおよかったでしょう。

配色にもメリハリがありバランスも取れていますが、青系の色の明度・彩度のコントラストをよりつけることでもう少し色の幅を感じさせる配色ができ、より分割面が生かされた構成になったと思います。2本あるうちの1本の半円柱の形が正確に取れていませんので、画面を俯瞰して確認してみるとなお良くなったでしょう。

3. 創造表現

【問題】
「旅」をテーマに、社会から身近な生活環境まで幅広い範囲から解決するべき問題を見つけ、これに対してデザインを生かした独自の解決方法を提案しなさい。
配付された答案用紙の枠内に解決方法を描画で説明し、解決すべき問題を100字程度の文章で説明すること。

試験時間…180分
解答用紙…ホワイトピーチケント
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)ヨコ自由
描画サイズ…275×266mm
画材…色材(色鉛筆・マーカーなど)・鉛筆・シャープペンシルなど

【出題意図】
テーマに対して多角的な視点で問題点を発見し、新たな解決手段などを環境や社会と関連させて、そのプロセスを段階的に提案する力があるかどうか。そしてその提案を適切な資格伝達手段と文章でわかりやすく第三者に伝えることができているかを問う試験です。

【評価のポイント】
・テーマに沿った問題を発見し、その問題に具体的な提案がされているか。
・現状では行われていない提案の新しさや斬新な発想とその実現性は考えられているか。
・最終的な提案目標だけでなく、その目標に到達するまでの段階的なプロセスの提案ができているか。
・視覚伝達表現と文章で分かりやすくまとめられているか。

今回のテーマである、「旅」に対して現状の日本の社会状況をしっかりと組み込んでいるところがいいと思いました。
また、アプリケーション内で完結させず、実際の観光地にキャラクターを設置して直接的な体験とアプリケーションを連動させるというアイデアが面白いと思いますが今回作成したキャラクター性(性格など)や展開などが描きこまれるともっと良いと思います。

4. 一般教養

【出題意図】
一般教養の試験では例年、長文問題、時事・常識問題、形の理解に関する問題を出題しています。いずれも桑沢で学ぼうとする人にぜひ知っておいてほしいことや、普段から関心を持っていてほしいこと、桑沢で磨くべき能力が何なのかが明確にわかるように心がけて問題を作成しています。

まず長文問題で求められているのは、日本語の文章の意味を読んで理解するという、これからの学校生活や仕事に欠かせない能力です。今年は「ダイバーシティ・アンド・インクルージョン」に関する論説を取り上げました。著者は、自身の経験や事例を取り上げながら、技術開発には時として技術者の価値観や無意識の偏向が反映されている場合があることを指摘し、それらを是正することによってイノベーションの道が開けると述べています。自らの価値観や偏向を省みる態度をもつことは、社会に新しい価値を提案するデザイナーにとって重要なことでしょう。

時事・常識問題では例年ことばの運用をはじめとして政治や科学技術、美術・文化史などについて、基本的な知識や教養の有無を確かめる問題を出しています。今年は日本語の四字熟語や英単語の表記、近年話題になったデザインや建築、アート、サブカルチャーにかかわるキーワード、国内外のニュースで扱われた出来事などをとりあげました。

図形を操作し空間を把握・認識する能力がデザイナーに欠かせないものと考えて、形の理解についても出題を続けています。

一般教養の問題用紙及び解答用紙は下記URLよりダウンロードしてください。
2025年度一般入学試験A日程問題・解答用紙
※一般教養の問題には解答は付しません。

総合デザイン科(昼間部) 一般入試B日程

試験概要

■ 実技試験:表現(180分/200点、用紙サイズ…A3、次の1.2から1科目を選択。)
1. 静物デッサン(観察力と描写力)
2. 色彩構成(構成力と色彩感覚)

1. 静物デッサン

【問題】
配付された「レンガブロック」と「標識ロープ」と「カップ(蓋付き)」を自由に組み合わせてモチーフを作り、解答用紙にデッサンしなさい。
※カップの蓋は取り外してもよい。
※直線を引くために定規やデスケールなどを使わず、すべてフリーハンドでデッサンすること。

試験時間…180分
解答用紙…M画学
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)タテ・ヨコ自由
描画サイズ…A3(420×297mm)
画材…鉛筆など

【出題意図】
表現力、発想力、探究心。基礎だけではなく総合力を問う試験です。
標識ロープの黒、黄色のルール、蓋と容器の関係と質感の違い、長方形ブロックのプロポーションを理解し構成を探ります。
あくまでも、モチーフを描くのではなく、モチーフの特徴から生まれる空間を描くこと期待しました。

【評価のポイント】
・観察した際、まず目に入るモチーフは何か理解しているか
・透明、不透明、質感の特徴を積極的に取り入れ構成しているか
・細部まで描き込み表現力を高めているか

蓋やブロックの形に歪みが見られるものの、手前から奥へと続く空間は素直に表現できています。遠近感の流れが自然で、モチーフの配置もしっかりと捉えられています。ただし、構成にもう少し工夫が欲しいところです。与えられたモチーフの特性をよく観察し、それらを活かした画面作りを意識することで、より魅力的なデッサンになるでしょう。積極的に構成を考える姿勢を持つことで、表現の幅が広がります。

円筒の底面と上面の関係が崩れているため、意図した奥行きへの視線誘導がうまく機能していません。特に、斜めに配置したブロックと、その奥へ回り込むロープの間にある空間を感じさせるためには、形の正確性が重要です。モチーフ同士の関係性をより丁寧に観察し、何度も修正を重ねながら探ることで、より説得力のある空間表現につながるでしょう。細部にこだわることで、構成の意図がより明確に伝わる作品になります。

モチーフと真剣に向き合いながら描かれた跡が感じられ、構成にも工夫が見られる好印象な作品です。画面全体に意図が伝わり、デッサンに対する意識の高さがうかがえます。ただし、一部パースの狂いが見受けられるため、形の正確性をもう一歩高めると、より説得力が増します。また、質感の違いを意識して描き分けることで、さらに完成度の高い表現になるでしょう。細部をより丁寧に仕上げることで、作品の魅力がさらに引き立つはずです。

手前のカップからロープを伝って奥へと視線が誘導され、シンプルながらも奥行きを感じさせる構成が魅力的な作品です。自然と目を引く工夫がされており、画面の流れもスムーズです。ただし、カップのふたに歪みが見られる点や、ロープと一部が同化してしまっているために、全体の緊張感がやや損なわれています。ふたの形をより正確に捉え、ロープとの境界を明確にすることで、より完成度の高いデッサンになるでしょう。

2. 色彩構成

【問題】
下記の図形や線を与えられた画面に、指定された数だけ配置し着彩して透明感のある平面構成をしなさい。
※それぞれの図形のサイズは自由。
※図形は元の形ががわかる範囲で画面からはみ出してもよい。
※色数は自由。

試験時間…180分
解答用紙…ハイアビスNEO
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)ヨコ
描画サイズ…373×250mm
画材…絵具・鉛筆・シャープペンシルなど

【出題意図】
指定された図形の特色をよく考え、直線・曲線などの性質や魅力を生かした画面分割と重なりの美しさを表現してください。バランスよく配置・配色する造形能力に加え、自分なりの視点やテーマを意識できているかを確認します。

【評価のポイント】
・それぞれの図形や線の特色をうまく生かして画面に配置できたか。
・それぞれの図形や線により画面の中でバランスや動き、リズムのある画面を表現できているか。
・画面の分割や重なりの特徴を生かして配色されているか。
・画面が美しく丁寧に仕上げられているか。
・出題の条件をすべて満たしているか。

配色などコントラストを考慮した構成を作ることができました。しかし、同じような大きさの分割面がちょっと多かったりするので、その点は気をつけてみてください。画面の分割が整理されると配色もよりすっきりしてくると思います。透明感については所々で努力は感じるのですが、配色・構図でまだまだ考慮できたと思います。

色数をもう少し増やしたい感じはありますが、メリハリのある配色ができました。分割のバランスもよく、綺麗に構成することができています。しかし、透明感については残念ながら乏しいので、もっとチャレンジして欲しかったです。問題文から何を求めてられているのか、意図をよく読み取ってもらってから制作してもらうと良さそうです。

画面を大胆に分割し、メリハリよく構成することができました。配色に関してはアクセントになる色を設けているのは良いと思うのですが、その色をどこに置くかはもう少し考慮できたと思います。また、青系の色を繊細に使い分けるていることは評価できますが、もう少し色の幅を感じさせる配色ができるとより良くなったでしょう。

明度差をきちんと考えて、メリハリのある良い配色で画面を作ることができました。しかし、透明感についてはもっと考慮することができたと思います。画面を少し整理して、自由曲線の入れ方を考え直してみてください。多くなり過ぎてしまっている要素の重なりがすっきりしてくると、もっとうまく透明感が表現できたと思います。

外国人留学生特別選抜

試験概要

■ 実技試験:静物デッサン(180分/200点、用紙サイズ…A3)

静物デッサン

【問題】
配布された「アルミホイル」と「メラミンスポンジ」と「ホース」を自由に組み合わせてモチーフを作り、解答用紙にデッサンしなさい。
※メラミンスポンジはちぎってはならない。
※直線を引くために定規やデスケールなどを使わず、すべてフリーハンドでデッサンすること。

試験時間…180分
解答用紙…M画学
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)タテ・ヨコ自由
描画サイズ…A3(420×297mm)
画材…鉛筆など

【出題意図】
それぞれのモチーフに共通しているのは、ある柔らかさです。
ホースは自在に曲がり、メラミンスポンジは柔らかく、アルミホイルは自由に形が作られる。
表面的な質感の違いを描き分けるだけではなく、それらを組み合わせて生まれる「空間」を構成する力を問うています。

【評価のポイント】
・モチーフの特徴を理解しているか
・モチーフの構成に工夫が見られるか
・特徴的な質感が描きわけられているか
・空間を理解しながら、組み合わせた一つの立体として描いているか

バランスよくレイアウトされ、モチーフの組み合わせ方に工夫を感じる作品です。それぞれの質感の描き方もよく描けていると思います。全体的なタッチは質感を表現できていますが、設置面の描き方のトーンの幅が狭いため、全体的な立体感は弱く感じられてしまいます。描き方の強弱や設置面の影のトーンの幅が広がると更に良い仕上がりになると思います。

全体的に丁寧な描き込みが印象的な作品です。それぞれのモチーフをよく観察していると感じます。特にアルミホイルの描き方は緻密さもあり質感を良く感じることができます。また、モチーフの組み合わせ方は、透明チューブの動きのある組み方は良いのです。しかし他のモチーフはもう少し動きをつけた配置と画面の余白のバランスを意識してあげると更に良い仕上がりになるでしょう。

専攻デザイン科(夜間部) 自己推薦入試

試験概要

各専攻に応じて課題作品を制作し、出願時に提出する。
■ ビジュアルデザイン専攻
1.自分の個展(発表会、イベントを含む)をイメージし、それを伝えるポスター)
2.ポートフォリオ
■ プロダクトデザイン専攻
将来の目標や自分の好きなプロダクトなどについて、文章とイラストで表現する
■ スペースデザイン専攻
将来の目標や自分の好きなインテリアなどについて、文章とイラストで表現する

1. ビジュアルデザイン専攻

【課題テーマ】
自分の個展(発表会、イベントを含む)をイメージし、それをつたえるポスター
※デザインに使われる素材(イラスト、写真など)は自作であること。
※上記の課題作品のデザインに使われる素材(イラスト、写真など)は自作であること。
※ビジュアルデザイン専攻の自己推薦入学試験は、出願時に「課題作品」および「ポートフォリオ」を提出し、試験当日はそれをもとに面接選考をおこないます。本WEBサイトには「課題作品」のみを収録しています。
※氏名など個人情報についてはぼかしを入れています。学校説明会で参考作品を展示しておりますので、ぜひご来場ください。

【課題作品サイズ】
A3タテ(297×420mm)

【制作意図】
このポスターは、私のイラストレーションを展示する個展を想定して制作しました。私が創作活動を行う上で大事にしている、「遊び心」をふんだんに詰め込んだデザインに仕上げています。この展覧会では、可愛らしいケーキを目の前にした時の多幸感をテーマに、ユニークな装飾が施されたケーキと、個性豊かな表情を見せるキャラクターたちを描いたイラストレーションを展示します。カラフルでポップな世界観で、見ているだけでワクワクしてしまうような展覧会を作り上げたいと考えています。「WE LOVE CAKE!」というタイトルは、キャラクターたちのケーキへの愛を表現しながら、単語の末尾を「E」で揃えることで、キャッチーさを狙いました。レトロで暖みのある雰囲気を醸し出すために、ポスターにはクラフト紙を採用しました。紙の色を活かすために、外枠を透過させ、そこへ同じく透過させた日付とテーブルが見切れるように配置しています。

【講評】
楽しげな様子が描かれたイラストレーションが印象的な作品です。キャラクターそれぞれ丁寧に描かれており、世界観もよく表現されています。クラフト紙を使用して仕上げている部分は、工夫や表現を楽しんでいる印象も持ちました。しかしクラフト紙にしたことで全体的に色が沈んでしまっています。また文字情報も画面を埋めているので、余白部分をもう少し意識することができれば更にバランスの良い作品に仕上がると思います。

【制作意図】
私はファインダー越しに写し出される光の柔らかさが好きです。なぜなら、肉眼では直視できない陽の光をカメラで撮影することで、正面から形として感じることができるからです。このことから、自分の個展をイメージするにあたり、今までに趣味で撮り続けた写真を陽の光に焦点を当てて展示しようと考えました。この展示の題名は、「sunlight」日差しです。陽の光というのは、他の光では感じられない温もりがあると思います。そこで、展示期間を寒さと共に寂しさすら感じる冬の季節に設定し、実際に陽の光を浴びているかのように、写真を大きく配置したところがポイントの一つです。このポスターを見た人がふらりと立ち寄れるように、写真の構図を意識して文字を配置し、シンプルかつ柔らかさも感じられるデザインを意識しました。

【講評】
雰囲気のある写真と手書き風のタイトル「sunlight」が印象的な作品です。広い余白も写真の雰囲気に合っていて抜け感を上手に表現できています。一方で、せっかくの大きな手書き風タイトルのテクスチャーが人工的に荒くなってしまっている点は残念です。また、ギャラリー名やオープン時間や住所などの左下の文字情報について、フォントや色、文字詰め/アキなどもう少し工夫をされると更に良いポスターになると思います。

【制作意図】
自分が写真展を開催すると仮定し、ポスターを作成しました。テーマは、プロテスタントの高校に通っていた時に出会った聖句「狭い門から入りなさい。(Enter through the narrow gate.)」です。この言葉は、「苦労が正しい道である」という単純な意味ではなく、他人に左右されずに自分と向き合い、時に困難な道を選ぶことで成長を見出すという教えをくれました。本店では、日常の一瞬を通して自分と向き合う体験を体現することを目指しています。展示するのは、普段撮り溜めている何気ない日常の写真です。ポスターで使用した写真は、視認性の観点と、迷いや不安を象徴するためにもモノクロで表現しました。対照にタイトルを赤文字で綴り、不安の内の強い意志を示しています。スワンボートの周りにもタイトルの聖句の続きを載せ展開性を作りました。本展が日常に潜む狭い門を見つけ、観賞者の自己と向き合う動機付けとなることを意図しています。

【講評】
空気感のあるおしゃれなモノクロの写真と欧文タイポグラフィーの組み合わせが印象的なポスターです。モノクロ写真とグレー味のある水色の背景色にエンジ色の文字が美しく、範囲や期間を表す「–(en dash)」をあえて長く使うことでデザインの「遊び」の部分が際立ちセンスを感じさせてくれます。欧文組版のルールを学ぶともっと良くなるとても魅力的なポスターだと思います。

【制作意図】
元々妖怪は人間に害のある厄災やや、不可解な現象の答えをして生み出された存在ですが、時代が進むにつれて現象の謎は解明され、いつしか妖怪は人間の脅威ではなくただのキャラクターへ変化しました。
この展覧会では、「片方だけ行方不明になるイヤホン」「なかなか押せないスマホ広告の×印」など日常に潜む些細な不満や不便を妖怪の仕業にしたイラストを展示します。令和の妖怪という言葉だけでは想像つかない存在がテーマとなっているため、ポスターの段階では白塗りのピクトグラムを使用し、その存在の不透明さを演出しています。 時代が、進み便利な世の中になって昔のような不可解な現象は減りましたが、逆に今だからこそ起こる現象や不便さもあると思っています。そこに注目し新たな答えを生み出すことで何気ない日常に新鮮味が加わり毎日が少し楽しくなる、そして伝統的な妖怪も風化せず愛され続けるようになれば嬉しいです。

【講評】
面白い企画の展覧会設定です。あるシーンのイメージビジュアルで見る人の目を惹きます。妖怪のタッチはとてもユーモラスで魅力的です。ただ色の使い方が全体的にバラツキがあり、タイトルの帯色も強い色を使用しているため、画面内の主役がわかりにくいのは難点です。あと、文字はタイトル以外は同じ大きさも多くなっているため、優先順位が判断しにくいので、メリハリをつける工夫もほしいです。

【制作意図】
人は異なる中の共通点を通じてコミュニケーションを図ります。間接的な交流は、時には人々をより近づけることがあります。イラストはそのための優れた媒介となります。この「間接交流」は私の今までの創作理念です。
そのため個展のタイトルには「伝言」を選びました。この言葉は私の母語である中国語でも「メッセージ」に関連し、情報を中継する意味を持っています。
ポスターの主視覚にはイラストを使用し、個展のスタイルを直感的に伝えることを目指しました。イラストには、円を作る子供たちと、「交流」を象徴する要素(スマホ、マイク、手紙、鳩など)を描きました。人物同士の動作は交差せず、周辺との物の交流を強調しています。彼らの関係の存在を示しつつ、直接的な交流はないという感覚を出したいと思います。人物は意図的に目を描かず、読者の「傍観感」を強化しています。

【講評】
緻密なイラストであることに加えて、平面図と俯瞰図の中間ような力強い構図を使うことで、目をひくポスターに仕上がっています。中央のタイトルや吹き出しの使い方もとても効果的で美しいです。画面下の文字情報もよく考えられているのですが、画面上の中央揃えと同じようなレイアウトになっているので、文字情報と黒い余白部分の対比をより明確に意図的に生み出すとより魅力的な作品になると思います。

【制作意図】
現代器物をモチーフにした「付喪神展」を企画し、ポスターを制作しました。
付喪神とは、アニミズムといわれる、万物に魂が宿るとする思想から生まれた存在です。室町時代記された「付喪神絵巻」には、粗末に扱われた器物達が妖となって人間に復讐する描写がされています。当時の人々は、古くなったものに対し恐れと同時に敬う姿勢を見出していったのではないかと感じました。
そこで、ごみ問題が懸念されている大量生産・大量消費の現代社会において、このような精神性が育まれていく必要があると思い、企画に至りました。付喪神という目に見えない存在を視覚表現し、展示を見た人にエコロジーやリサイクルの重要性を訴えます。
ポスターは、企画の世界観を伝える事に意識して制作しました。現代器物をモチーフにした付喪神の造形を自分なりの解釈でビジュアル化し、絵巻のようなデザインにしています。

【講評】
現代器物の付喪神のキャラクターそれぞれの「モノ」の特徴を上手く表現しています。また、ざらざらしたノイズ感のある淡いトーンのグラデーションを使うことでイラストレーションが可愛くなり過ぎていないところも評価のポイントです。左下の開催場所や時間、問い合わせ先などのインフォメーション部分をもう少し丁寧に作り込むとさらに良くなると思います。

【制作意図】
私はうすっぺらい人間である。はじめからそうだった。まっとうな人なら芯や根拠の入っている中身の部分がスカスカの空洞で、いつも理解が浅い。どう生きても同じように地に足がつかず、ヒラヒラ浮いてしまうのに、長い間悩んだ。そこでのりしろの個展だ。のりしろはペラペラな面同士を裏からつないで支え、立体化させる。しかるべき場所に設けなければ、同じ中身のない形もしっかり立てるようになる。正攻法とは違う進路をたどり、違う順番で経験を積んできたが、そのひとつずつが中身に代わって私を支えるのりしろだ。まだ集めている道中なので、これからののびしろと合わせて、旅の地図のように展示したい。ポスターは地球をイメージした正十二面体の展開図を中心に作った。文字情報は地図のパーツのように配置し、題字ののりしろ部は、文字通りたくさんののりしろを配することで、のびしろ部は地図の先に出る矢印の書き込みを足すことでそれぞれ強調した。

【講評】
グラフィカルな作品でメインビジュアルに目がいくようなオブジェクトが魅力なポスターです。展覧会タイトルがキャッチコピーになっているのも工夫されています。ただ、作品オブジェクトがインクジェットノズルによる汚れが目立つので、これは修正すべきだったと思います。ポスターを見る人に作品内容以外の要素にストレスをかけない配慮がデザイナーには必要だからです。

【制作意図】
私の描いた絵の展示会を想定したポスターを作成しました。とくに半年前に訪れたサンフランシスコでの車窓からの景色が美しくメインビジュアルに据えました。
私は自分の見てきたもの、きれいだと感じたものを、色やディティールなど写真から再現する作業に達成感を感じ、描く過程で当時の気持ちを反芻しています。日記の役割も担っています。
色々なことをすぐに忘れてしまうので、見てきたもの、忘れたくないことを表現していることが伝われば良いなと思いました。

【講評】
リアリズムタッチが魅力のイラストレーションポスターです。画面が3分割で、分割箇所に展覧会タイトルや会期等の情報を記載しているのも工夫されています。この展覧会が写真の展覧会かイラストレーションの展覧会かの詳細がわかりにくいものの、美しい作品が展示されていそうな雰囲気があるので、とてもいいポスター作品と言えるでしょう。

2. プロダクトデザイン専攻

【課題テーマ】
「将来の目標や自分の好きなプロダクトなどについて、文章とイラストで表現する」
※1枚に全て手書きで表現する。紙・画材は自由。
※プロダクトデザイン専攻の自己推薦入学試験は、出願時に「課題作品」を提出し、試験当日はそれをもとに面接選考を行います。

解答用紙サイズ…A3ヨコ(420×297㎜)
描画サイズ…A3ヨコ(420×297㎜)
画材…色鉛筆・マーカーなど

【出題意図】
プロダクトデザイン分野では、人が身体機能を拡張するためのあらゆる道具のデザインを行います。機能や使いやすさはもちろん、技術や生産性も考慮し、使用環境との調和を図れること、深い観察力と統合力、そして計画性を持つことをデザイナーは求められます。そこで、次代を担うデザイナーとして、プロダクトデザインにおける興味や考えを表現できるかを見ます。

【評価のポイント】
・興味や考えが、具体的な内容と文章やイラストで表現できているか。
・プロダクトデザインが担う将来のヴィジョンが示されているか。
・自分の興味や将来像を社会との関わりの中で考えられているか。

本作品は、真空耐熱マグカップとその蓋のデザインに着目しており、蓋の取り外しやスライド機構といった具体的な機能性がスケッチで丁寧に表現されています。製品の各構造が明確に示されており、特に断面図やパーツの細部描写が高評価を得ました。作品全体から“豊かで快適な生活のためのプロダクト”というテーマが一貫して伝わる一方で、説明文や素材に関する詳細がもう少し具体的であれば、作品の完成度がさらに高まったでしょう。

作者が日常生活を快適にすると感じた対象製品を、多面的に表現した作品です。手描きのスケッチは製品のアイデアを視覚的にわかりやすく伝え、各要素の機能や使用場面を丁寧に説明しており、作者のデザインに対する高い洞察力が感じられます。これに製品の素材選択やカラーバリエーション、具体的な使用例の補足があれば、さらに説得力と完成度が高まるでしょう。

曲線と温かみをテーマに、製品を観察してその魅力を丁寧にまとめた作品です。スケッチは製品の形状や質感を視覚的に表現しており、観察力の高さと分析力がうかがえます。製品の使用シーンやその文化的背景についてさらに深掘りすることで、観察内容にさらなる奥行きを加えることができるでしょう。この作品は、製品の魅力を的確に引き出し、それをわかりやすく伝える力を感じさせる内容です。

この作品は、飲むという日常的な行為を彩る既存製品を観察し、その特徴を細やかにまとめています。ペットボトルやマグカップ、グラスといった製品が取り上げられ、それぞれの利便性や美しさ、使用者への配慮を的確に捉えています。特に、ペットボトルの取り出しやすいデザインや収納の工夫、マグカップの持ち手の形状や飲みやすさ、グラスの収納性とシンプルな美しさが観察を通じて明確に表現されている点が良く、日常生活にある製品の魅力を再発見し、その価値を伝える力が光る内容です。

3. スペースデザイン専攻

【課題テーマ】
「将来の目標や自分の好きなインテリアなどについて、文章とイラストで表現する」(A3サイズ・ヨコ)
※なお、上記の文章には本校の授業内容との関連を具体的に記述すること。
※1枚に全て手書きで表現する。紙・画材は自由。
※スペースデザイン専攻の自己推薦入学試験は、出願時に「課題作品」を提出し、試験当日はそれをもとに面接選考を行います。

解答用紙サイズ…A3ヨコ(420×297㎜)
描画サイズ…A3ヨコ(420×297㎜)
画材…色鉛筆・マーカーなど

【出題意図】
インテリアとは、人と人がともに暮らしたり、憩うための快適な空間(スペース)のデザインです。空間を外側ではなく、内側から捉え、心に響くデザインを考えることが求められます。そこで、次世代を担うデザイナーとして、住空間や商空間、またそこで使われる家具を含めたインテリアデザインの中から興味のあるものを文章やイラストで表現してもらいます。

【評価のポイント】
インテリアとは、人と人がともに暮らしたり、憩うための快適な空間(スペース)のデザインです。空間を外側ではなく、内側から捉え、心に響くデザインを考えることが求められます。そこで、次世代を担うデザイナーとして、住空間や商空間、またそこで使われる家具を含めたインテリアデザインの中から興味のあるものを文章やイラストで表現してもらいます。

イラストは非常によく描けており、外観・内観共に描かれていることも良いでしょう。また特徴的なデザインのドアや平面図(間取り)のスケッチも描かれていることも大変好感がもてますし、レイアウトも綺麗に整理されている点も評価出来ます。「将来の目標」と「桑沢で学びたいこと」が箇条書きで端的に説明されている点も評価できますが、それぞれの内容と描くイラストの内容が密接に関係していると更に良かったでしょう。

桑沢の卒業生である倉俣史朗氏がデザインし現存している貴重なBarを実際に体験し、イラストを描かれたことは大変評価できます。また、照明の様子はイラストでは表現し難いのですが、それが出来ているところも評価出来ます。空間の表現に邪魔にならない人間の描き方は難しいのですが、大変うまく描き入れられています。「将来の目標」や「桑沢で学びたいこと」はもう少し箇条書きで表現し、特に強調したい箇所に色をつけるなどするともっと伝わり易かったでしょう。

メインのパースは雰囲気のあるイラストがかけていますが、全体的に少し空白が目立つ印象がありますので、文章量を増やすなどして、もう少し密度のある部分を作り、メリハリが出ると更に良かったでしょう。また、イラストに人間を描き込むことで、空間の大きさ、高さなどが把握できるようになりますので、出来るだけ人間を描き込むと良かったです。「将来の目標」や「桑沢で学びたいこと」は箇条書きで書かれているのは大変良いですが、もう少し文章量があると良いでしょう。

イラストは非常によく描かれていますが、断片的なイラストが多いので、建物のどの部分を描いているか、全体の平面(間取り)スケッチか建物の全体のスケッチなどあれば、更に良かったでしょう。また、人間が描かれていませんが、描くことで空間の大きさや賑わいを表現することが出来ます。人間の描き方は難しいですが、何度か練習して描き込んだ方が良かったでしょう。説明文に関しては、それぞれが端的に箇条書きで具体的に描かれているので、非常に読みやすく評価出来ます。

専攻デザイン科(夜間部) 一般入試A・B日程

試験概要

■ ビジュアルデザイン専攻
180分/与えられた言葉とモチーフをもとにした鉛筆表現による想定デッサン
■ プロダクトデザイン専攻
120分/将来の目標や自分の好きなプロダクトなどについて、文章とイラストで表現する
■ スペースデザイン専攻
120分/将来の目標やインテリアなどについて、文章とイラストで表現する。

1.1 ビジュアルデザイン専攻A日程

【問題】
「回」という文字から思い浮かぶ「気になる物」を自由に考えなさい。
配付されたモチーフを自由に置き、その中に「気になる物」を入れたと想定して、モチーフと「気になる物」をスケッチしなさい。
※「気になる物」の大きさはモチーフの大きさと比較して、現実とは違って自由なサイズで表現してよい。
※「気になる物」はモチーフの外に描いてもよい。
※「気になる物」は自分の好きな「物」に限らず、嫌いな「物」や苦手な「物」でもよい。
※必要に応じて、モチーフや「気になる物」が複数あったり、背景に絵柄を描いてもよい。
※配付されたモチーフは加工・変形しないこと。
※配付された答案用紙に鉛筆(黒)で表現すること。
※「持参した物」や「試験会場内にある物や人体」は描かず、「気になる物」は想像で描くこと。
※直線を引くために定規やデスケールなどを使わず、すべてフリーハンドでスケッチすること。

試験時間…180分
解答用紙…特白画学
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)
描画サイズ…270×234㎜
画材…鉛筆など

【出題意図】
テーマの「ことば」を自分の経験や関心をもとにイメージを膨らませ、あたえられたモチーフを正確に描写して、その中に「ことば」から発送したイメージを自由に組み込み表現します。最後にその制作意図を論理的で適切な文章でまとめてもらいます。
テーマである「ことば」とモチーフ(箱・紙袋・カプセルなど広い意味での「器」)は毎年変わります。
アイデア(発想、着想)、表現(具体的な絵柄としての工夫)、スケッチ(描写、デッサン)、文章(日本語、論理)など、総合的な表現の力が求められます。
日頃から身近な物をスケッチし、注意深く物を見ること。また、あたえられた「ことば」から自由に幅広く発想できる柔軟な発想力・表現力を養うことが大切です。

【評価のポイント】
・問題の「ことば」との関連性からアイデアを表現しようとしているか。
・「ことば」をもとに自分なりの発想が展開されているか。
・その発想・イメージが必要とする「物」を想像や記憶で描くことができるか。
・実際にあるモチーフ(器)を正確に描写しているか。
・制作意図をきちんとした文でまとめる文章力があるか。

人柄が伝わるストーリーを丁寧なデッサンで表現しています。カーネーションとバラに加えて、リボンを使用することで画面の中にリズムを生み出すことに成功していますが、右端の余白の意図は伝わりにくいです。また配布されたモチーフの紙コップの質感や形をしっかり観察して描き込む必要があります。作業は丁寧なので、構図に勢いがでるとさらに良い作品になったでしょう。

出題された言葉に対する解答として、自然で適切なアイデアが表現されています。物語性があり、観者がイメージを広げられる工夫も見受けられます。ただ、もう少しメリーゴーランドだと分かりやすいオブジェクトが追加されると、より伝わりやすくなったでしょう。構図や質感がしっかりと描かれ、全体的に完成度の高いデッサンに仕上がっています。

大胆な構図と勢いのある魅力的な作品で、大量の魚群を家で見たいという着眼点も面白いです。多種多様な魚群や水の描写が非常に優れています。配布されたモチーフの描写は丁寧ですが、使い方や配置に工夫が感じられません。モチーフの全体像が見える状態で、魚の回る動きや飛び出した魚群と水の関係がより明確に描かれると、さらに良い作品になるでしょう。

与えられたモチーフや素材の形がしっかりと描写され、全体の奥行きある構図も効果的です。ただし、描かれている物の質感がより明確に描き分けられると、さらに良くなると感じました。テーマである「回」を“糸”とする発想は良いのですが、文章の内容に沿って糸が回転している表現がもう少し描かれていると、より完成度が高まったでしょう。

1.2 ビジュアルデザイン専攻B日程

【問題】
「大」という文字から思い浮かぶ「気になる物」を自由に考えなさい。
配付されたモチーフを自由に置き、その中に「気になる物」を入れたと想定して、モチーフと「気になる物」をスケッチしなさい。
※「気になる物」の大きさはモチーフの大きさと比較して、現実とは違って自由なサイズで表現してよい。
※「気になる物」はモチーフの外に描いてもよい。
※「気になる物」は自分の好きな「物」に限らず、嫌いな「物」や苦手な「物」でもよい。
※必要に応じて、モチーフや「気になる物」が複数あったり、背景に絵柄を描いてもよい。
※配付されたモチーフは加工・変形しないこと。
※配付された答案用紙に鉛筆(黒)で表現すること。
※「持参した物」や「試験会場内にある物や人体」は描かず、「気になる物」は想像で描くこと。
※直線を引くために定規やデスケールなどを使わず、すべてフリーハンドでスケッチすること。

試験時間…180分
解答用紙…特白画学
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)
描画サイズ…270×234㎜
画材…鉛筆など

【出題意図】
テーマの「ことば」を自分の経験や関心をもとにイメージを膨らませ、あたえられたモチーフを正確に描写して、その中に「ことば」から発送したイメージを自由に組み込み表現します。最後にその制作意図を論理的で適切な文章でまとめてもらいます。
テーマである「ことば」とモチーフ(箱・紙袋・カプセルなど広い意味での「器」)は毎年変わります。
アイデア(発想、着想)、表現(具体的な絵柄としての工夫)、スケッチ(描写、デッサン)、文章(日本語、論理)など、総合的な表現の力が求められます。
日頃から身近な物をスケッチし、注意深く物を見ること。また、あたえられた「ことば」から自由に幅広く発想できる柔軟な発想力・表現力を養うことが大切です。

【評価のポイント】
・問題の「ことば」との関連性からアイデアを表現しようとしているか。
・「ことば」をもとに自分なりの発想が展開されているか。
・その発想・イメージが必要とする「物」を想像や記憶で描くことができるか。
・実際にあるモチーフ(器)を正確に描写しているか。
・制作意図をきちんとした文でまとめる文章力があるか。

モチーフであるプラスチック製のカップの描写が非常に優れています。透明感や素材感が細部まで丁寧に描き込まれており、テクニックが感じられます。また、「気になる物」として選んだ「花」は単純なモチーフながら、浮遊する構図が幼い頃の思い出の一瞬を切り取った印象を効果的に伝えており、非常に魅力的な作品に仕上がっています。

動きの描写に面白さが感じられる作品です。光沢のある透明な素材感やモチーフの個体差がしっかりと描かれており、観察力も伝わります。花びらの表現も良い印象です。しかし、説明文の内容とデッサンの関連性にやや強引さが感じられます。より適切なアプローチを取り入れ、デッサン表現と説明内容のバランスが取れると、より伝わりやすい作品になるでしょう。

与えられたモチーフと鳥の巣の形状が近いので、自然に作品を見ることができます。モチーフや構図が全体的にもう少し大きく描かくことで、インパクトのある作品になったでしょう。雛鳥が1羽前に出るなど、動きを加えるとさらに良い印象を与えます。デッサンはよく描けていますが、鉛筆の色幅をもっと活用し、質感をより表現するともっと良くなるでしょう。

一匹の金魚が大きく育った、というのは面白い話で金魚も目を惹くように描かれています。金魚の顔も印象的でユーモラスな方向の作品に仕上がっていますが、作品説明に記載された「人生の真意」や「周囲のさまざまな物を取り込む」といった大きなテーマがデッサンでは十分に伝わっていない印象です。配布されたモチーフの形状や質感もより正確に描き込むと、さらに完成度の高い作品になるでしょう。

2. プロダクトデザイン専攻

【問題】
将来の目標や自分の好きなプロダクトなどについて、文章とイラストで表現しなさい。

試験時間…120分
解答用紙…ホワイトピーチケント
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)ヨコ自由
描画サイズ…379×252mm
画材…色鉛筆・マーカーなど

【出題意図】
プロダクトデザイン分野では、人が身体機能を拡張するためのあらゆる道具のデザインを行います。機能や使いやすさはもちろん、技術や生産性も考慮し、使用環境との調和を図れること、深い観察力と統合力、そして計画性を持つことをデザイナーは求められます。そこで、次代を担うデザイナーとして、プロダクトデザインにおける興味や考えを表現できるかを見ます。

【評価のポイント】
・興味や考えが、具体的な内容と文章やイラストで表現できているか。
・プロダクトデザインが担う将来のヴィジョンが示されているか。
・自分の興味や将来像を社会との関わりの中で考えられているか。

この作品は、「ものと人の間の時間」というテーマに対して、自分の関心を寄せるプロダクトをそれぞれの体験価値を、言葉とイラストで的確に表現しています。全体として視覚的にも読みやすく整理されており、色使いやレイアウトにも工夫が見られます。
各プロダクトに対する考察では、単なる機能の説明にとどまらず、「人の生活にどのような影響を与えたか」など、プロダクトデザインの本質に迫ろうとする視点が評価できます。
また、最後の「目標とするデザイナー像」では、自身の将来像を「生活をより豊かにするモノづくり」と明確に定義し、そのために必要な視点や学びを自覚している点に好印象を持ちました。プロダクトをただ消費する立場から一歩進んで、「人のために設計する姿勢」が表れており、将来性を強く感じさせます。

3. スペースデザイン専攻

【問題】
将来の目標や自分の好きなインテリアなどについて、文章とイラストで表現しなさい。
※なお、上記の文章には本校の授業内容との関連を具体的に記述すること。

試験時間…120分
解答用紙…ホワイトピーチケント
解答用紙サイズ…A3(420×297mm)ヨコ自由
描画サイズ…379×252mm
画材…色鉛筆・マーカーなど

【出題意図】
インテリアとは、人と人がともに暮らしたり、憩うための快適な空間(スペース)のデザインです。空間を外側ではなく、内側から捉え、心に響くデザインを考えることが求められます。そこで、次世代を担うデザイナーとして、住空間や商空間、またそこで使われる家具を含めたインテリアデザインの中から興味のあるものを文章やイラストで表現してもらいます。

【評価のポイント】
・イラストの表現力や描き込み具合。
・スペースデザインにおける自分の興味が具体的に書かれているか。
・何故<桑沢>で勉強したいかと将来の目標の両方が、授業内容との関連で具体的に書かれているか。

イラストは外観と内観と共に建築の概要や好きなポイントが端的に箇条書きで描かれているのは非常に良いですが、内観が少し把握し難いので、人間の描き方や配置の仕方をもう少し工夫したほうがよかったでしょう。桑沢で学びたいことや将来の目標も箇条書きで書かれていて分かりやすいですが、全体の紙面の印象として少し空白が目立つので、部分的に背景に色をつけたり、文章も特に強調したい部分に色を使って下線を引くなどすると、レイアウトの印象が良くなるでしょう。

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