2019.06.198.インディペンデント
自ら学び、世に伝える
桑沢デザイン研究所を始めとして、六本木通りから明治通りの周辺に青山学院大学、國學院大學、実践女子学園、聖心女子大学など多数の学校が集まる渋谷。渋谷東側の高い台地は、江戸時代に大名屋敷が広がっていた御料地でした。それが払い下げられ、多数の学校が建設されたことから文教地区に指定され、歴史ある神社、学校や図書館、美術館がたたずむ立ち落ち着いた雰囲気に満ちています。
学び、自立する精神を伝えているのは、渋谷駅周辺から20メートルほども高い台地にある温故学会会館です。盲目でありながら勉学に励んだ江戸時代の学者・塙保己一★はなわほきいち★の功績をたたえ、良書を残し伝えるために彼が偏纂した『群書類従★ぐんしょるいじゅう★』版木(国・重要文化財、17,244枚)が管理・保存されています。1927年に完成した建物は鉄筋コンクリート2階建て、和洋折衷の珍しい建築で、奇跡的に戦火を逃れたため今でも当時の姿のままです。
街から学び、街をつくる
街全体をキャンパスに、働く社会人など誰もが学び、時には教え、街づくりに参加できる「大学」も生まれています。NPO法人「シブヤ大学」は、渋谷区内の各地で10講座程を開講。数百円の寄付は募りますが受講は無料で、企業と行政からの支援によって運営されています。実際の現場で、情報を得るだけではなく、アイディアや考え方を学び、共有しながら未来を形づくっていく。実践とネットワークを活かした学び舎が自然に発生していくのも、渋谷ならではかもしれません。
新しいアイディアが現実になっていく
全国各地で発信されているウェブサイト「みんなの経済新聞」が生まれたのも渋谷でした。「シブヤ経済新聞」は、渋谷地区の情報を伝える番組を花形商品研究所が始めたことに合わせてスタートした企画で、マスコミとは異なる、地域の情報発信サイトです。2004年に「ヨコハマ経済新聞」が開設されてから、各地のウェブ制作会社などが花形商品研究所と提携し、地域の経済・文化情報を伝えるサイトを次々に開設。2016年3月時点で国内106拠点・海外11拠点の『経済新聞』が展開されています。
さらにIT関係では、1990年代から2000年にかけて現ライブドアやGMOインターネットなどベンチャービジネスの起業が相継ぎ、IT関係企業が集中しているのが渋谷でもあります。アメリカのシリコンヴァレーに倣い、渋(Bitter)谷(Valley)にかけた「渋谷ビットヴァレー構想」による環境整備も進められてきました。新しいアイディアと夢(青写真)を抱く人びとが集い、刺激し合う都市なのです。