浅葉克己 渋谷の桑沢>

2019.06.037.カーニヴァル空間

街全体が祭り空間になる

 観光客やスーツやコスプレの人々が雑多に行き交う、賑やかなスクランブル交差点。ハロウィンになると仮装した人びとが群れ集い、互いに撮影し合う風景は、渋谷の名物になりつつあります。
 通りを歩く楽しみとスリル。それはかつて通りや辻で行われてきた、祭事やカーニヴァルに通じているのかもしれません。日本でも古来、生活の拠点をつなぐ道や交通の要となる通りで定期市がひらかれ、祭り行列が練り歩いたり、辻で神輿をぶつけ合わせたりする祭事が行われてきました。タワーレコード、HMVなどのCDショップや映画館が立ち並ぶ、華やかな渋谷の通り。そこを歩けば、並び立つ露店の前を歩く時のような高揚感が味わえるからこそ、海外の観光客からも人気なのかもしれません。

PARCO/公園へつづく道が舞台

 しかし、渋谷の通りにこうした活気が生まれたのは、いくつかの拠点ができてからでした。まず渋谷駅、そして少し離れた坂の上へ。人の流れを変えたのは1973年にオープンした渋谷PARCOでした。最上階(9階)の西武劇場(現在のPARCO劇場)では前衛的な音楽家や劇団をはじめ、若手デザイナーたちのファッションショーを連続開催。舞台が観客側にまでひらき、皆が主役となってファッションを楽しみ、見る/見られる感覚が生み出されます。ただ消費するのではなく自ら演出を楽しみ、若者たちが自分たちのネットワークで新たなことに挑戦する「広場」の気運が生まれたのです。

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新たな舞台となった、スクランブル交差点

 そして今、海外旅行客が最も注目するスポットとなった、渋谷のスクランブル交差点。大画面に囲まれたスクランブル交差点は、青信号となる45秒間に、多い時には数千人の人びとが行き交います。アリーナのように中心部が低く、周囲をビルと大画面に囲まれた舞台。そこに身を置いた旅行者たちは、自身と大量に行き交う群衆を撮りながら、見る/見られることそのものを楽しみます。ワールドカップの時には、知らない人とハイタッチをして通り過ぎ、10月末のハロウィンになれば奇抜な仮装をして挨拶し合い、ひとときのカーニヴァルを満喫するのです。
 信号が青になる度、出現するカーニヴァル空間。その磁場を生み出すのは、行き交う人々自身です。それを可能にする寛容な空気が生まれたのは、先駆的なイメージ戦略とむすびつく、街づくりが仕掛けられたからなのです。

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